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高校生編 第7話
「場所はどこですか」
「一年二組。生徒会室に来る途中、たまたま通りかかって」
「高瀬先輩はここまでで、ありがとうございます」
一年四組を過ぎ、三組の教室に差し掛かったところで、翔太が、これ以上オメガの近くに行かない方が良いと判断した。
一年二組に着くと、中から施錠し、廊下側とグラウンド側のどちらのカーテンも手早く閉める。
「んぁあ、も……」
床に倒れ、苦しんでいるオメガの生徒の傍に片膝を着く。
「抑制剤は、ちゃんと持っていますか」
オメガの生徒の顔を、どこかで見た覚えがあり、眉間に皺を寄せる。……文化祭のジンクスを尋ねた、一年生の実行委員だった。
震える指で、示した方に鞄が一つ置かれていた。翔太が鞄の中の抑制剤を探すと、急いで一錠取り出し飲ませる。
十分ほど経って、落ち着いた生徒は翔太にお礼を言って、まだ少し足元がふらつく中、下校していった。
部活動に勤しんでいる生徒以外は、ほとんどの生徒が校舎内に残っていなかったことが幸いし、オメガの生徒は抑制剤を飲んで、無事に症状が治まった。
翔太から報告を受けた紘一は、その足で職員室に報告に向かった。
オメガの発情は、アルファの理性を奪う。保健教育で受けてはいるが、その威力がどのようなものなのか、自分自身経験したことがない紘一は理解ができない。
「あれ? 高瀬はもう帰ったのか?」
教師への報告を終え、生徒会室に戻ってきた紘一は、さっきまでいたはずの高瀬の姿を捜す。
「ちょっと席を外してるだけです。すぐ戻って来ると思います」
パイプ椅子を引き出し、翔太の向かいに腰をかける。
「佐久間、お前は番 になったとき、躊躇しなかったのか?」
あまり触れてはいけないような気がしていて、口に出さないようにしてきた言葉だった。
「躊躇はしませんでした。けれど、今でも後悔しています。私の番は兄の恋人でした。運命の番だったからといって赦されることではありません」
「後悔って……。その人のことを……」
「やー。参った参った。オメガって本当にいい匂いするんだな」
手をハンカチで拭きながら、トイレから戻ってきた高瀬によって会話は中断された。
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