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第8話

「あまり情をかけると、卒業試験の時に辛くなるよ」 「それを言うならお前もだよ。俺を助けずに見殺しにしとけば、ライバルも一人減ったんじゃないか?」 「……ただの気まぐれだよ。ついでに、ロボットでストレス発散したくなったんだ」 「じゃ、俺も気まぐれだ。ついでに怪我の治療をしたくなっただけだよ」 「……バカみたい」  そう悪態をつきながらも、(セブン)は少し嬉しそうだった。  一見怒っているようにも見える表情だったが、これは喜んでいるのを悟られたくないだけだ。同じ顔をしているから、おおよその感情は読みとれる。  内心で笑いながら、(フォウ)は話を振ってみた。 「そう言えば、(セブン)は『卒業試験』には何が出ると思う?」 「そんなの、僕に聞いてどうするんだよ?」 「いや、どうってこともないけどな。でも気になるじゃないか。何を試されるかわからなければ、前もって対策もできないしさ」 「対策しようがないでしょ。どうせ殺し合いが行われるんだからさ」  サラッと言われた台詞に、(フォウ)は思わず手を止めた。 「いや、そんなまさか……変な冗談言うのやめろよ」 「冗談でもないと思うよ。卒業できるのはたった一人だけ。この意味をよく考えてみれば、試験内容なんて容易に想像できる」 「いやいや、それはさすがに……」  そう否定してみたものの、だんだんあり得ない話ではないような気がしてきた。  今回、ヴェルトマー公爵に求められている「息子」の候補者が、ゲノム学園に七人いる。  もちろん別の個体だから指紋は違うし、微妙な顔の差――例えばホクロの位置とかも違うけれど、この中から「ミハエル・ヴェルトマー」になれるのはたった一人だけなのだ。他の六人はいらない。  では、その一人はどうやって選ぶのか。不要になった六人はどこへ行くのか。 (いやいや、いくらなんでもそれはないだろ……)  (フォウ)は悪い考えを頭から無理矢理追い出した。  ないない、あり得ない。そんなことしたら、今まで育てて来たクローンたちがほとんど無駄になってしまう。  多分卒業試験に出るのは、ベグニオン帝国の歴史とか貴族社会に必要な教養、基本的な学問とか……その辺りだろう。きっとそうだ、そうに違いない……。

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