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看病に行く
「こんくらいなら30分くらいで着きすね。」
「あ。あ。」
運転席の根岸に聞かれて、うわの空で返事をしながら
「あっ。根岸、お前。家。全然違う方じゃね?」……いまさら気がついても遅い。
「いや。社長命令なんで」けど。
「平気ですよ。俺。今、暇なんで。」
まじ。……わりぃ。
うちの会社は俺がアイドルと付き合うとか、男と付き合うとか……何も言ってないのに、知ってるようで。
でも、その事にも誰も何も言わない。……
まったく、職人堅気のやつらばっかり。
みんな本当に人がいい。
さっき、外に根岸が来たのも、なんかを察した誰かが寄越したんだろう。
有給って……本当に今までそんな話なかったのに。
「着きましたよ。」根岸に言われて俺は
「あ、あ、ありがとう。根岸、気をつけて帰れよ。」「はーい。」
「今度、飯奢るよ、!」
外階段を一段飛ばしでかけあがり、部屋にはいって、適当に洋服を手頃なカバンにつめた。
あ。一応、連絡してはみるが連絡は相変わらずない。
「今から行く。」簡単にメールを打つ。
インフルエンザだからどこかに行くことはないとは思うけど。
焦る気持ちもあるが頭の中では、何か買って行くか、とか何食べたいのかな?
具合、本当に悪いんじゃ。なら俺行ったら、迷惑かな?……とか……とか、色々戦ってた。
「ブ。ブ。ブ。……」突然携帯がなった。
びっくりして落としそうになり、
「あつ!俺。」とかへんな出方をして、しまった。
「孔?……グズン」泣いてるし……
「ダイ!大丈夫?熱は?」
「平気……。孔。来ちゃだめだからね。」
……電話の向こうで泣いてるのがわかる。
「はぁ~。何言ってるんだよ。看病に行くからな。大人しく寝てろよ。食欲はある?」
「……来ちゃ、だめだからね!」
いじっばり。……本当は寂しがりやのくせして。
「(゜ロ゜;。そう。ならイカネーからな!いいのかよ。」そう、強く、少々強引に言うと
「……いいよ。だって……孔に移ったら大変だもん。グズン」
「ならイカネよ。」本当に行かないぞ。
「……いいのかよ。ダイ。」
そう、優しく言うとやっと、コイツは
「……ィ……ャ。」
本当に本当に小さい声で言った。
「聞こえません。」意地悪をして言うと
「……いや。……だって……でも孔にから」
……って何言ってるんだコイツは?
「あーもう。お前、何言ってるかわかんねーから。寝てろよ。プリン買って行くからな。」
電話を切って車を発信させた。
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