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第2話
ローションはともかく、コンドームは二人の間ではあまり使用しない。使った方が体への負担が少ないのはわかっているけれど、翔真がナマでしたがるのと、
「まあ、中に出されるのが好きな瑞希には、物足りないかもしれないけどな」
瑞希は真っ赤になって、怒りでわなわなと震える。
そんな瑞希を知ってか知らずか、
「なぁ?いいだろ?」
翔真が焦れたように聞いてくる。
「かっ……鍵は?ドアの鍵」
「前は入って来る時に閉めたぜ」
「じゃあ、あっちは?」
教室の後ろのドアを指差す。
翔真はやれやれといった感じでため息をつくと、瑞希の側から離れて確認しにいく。ついでにエアコンのスイッチを入れるのも忘れない。その様子をドキドキしながら瑞希は見ていた。
「閉めてきたぜ。ワガママ姫様」
「わっ、わがままとは違うだろ?姫でもねぇ
し」
翔真は瑞希のすぐ近くまで戻って来ると、椅子をずらして適当に机をくっつけている。
(ほっ、本気かよ~!?)
まさか高校生活最後の日に、学校の教室でセックスすることになるなんて。
翔真に手を引かれて立ち上がると、体をそのまま反転するように、机の上に押し倒された。
翔真の体がのし掛かってくる。
「うるさい口は、塞ぐに限るな」
翔真の唇が、瑞希の唇に重なる。さっきの触れるだけの軽いキスとは違い、すぐに歯列を割って、翔真の舌が潜りこんでくる。
「んっ……」
すくむ舌を誘い出すように絡め取られ吸われた。翔真の唾液と瑞希のそれが、口腔内で混ざりあう。
官能を否が応でも引きずり出すキス。瑞希の体は逆らえず、まるで着火でもしたように、瞬時に熱くなっていく。
翔真の唇が、細く唾液の糸をひきながら離れた時には、瑞希の息はすっかりあがっていた。
「適度にガードが固いのも、俺にとっては好都合だ。お前のガードが緩みすぎたら、お前の可愛さに気づいた誰かに、持ってかれるかもしんねぇしな。隙なんて、俺の前だけで見せればいい」
まずは靴を脱がされて。
翔真の手が瑞希のベルトにかかる。ベルトを解かれ、ズボンの前を開かれる。少し浮かした腰から尻を通過すると、ズボンは自然と足元に滑り落ちていった。
翔真の手が、股間の膨らみ具合を確かめるように撫で回す。下着をずり落ろされて、勃ち上がった性器が、ふるんと震えて露になった。下着をズボンごと完全に抜き取られると、剥き出しの下肢が、ひんやりとした外気に触れ、心細さを感じてしまう。
瑞希のズボンと下着は隣の席に放り投げ、
「俺が濡らすのと、これ使うの、どっちがいい?」
翔真がローションのパッケージを指に挟んで、わざわざ尋ねてくる。
襞をひとつひとつ丁寧に舐められて、粘膜を翔真の舌で直に愛撫される快感は、気持ちよすぎて……。思い出しただけで、体の芯が熱くなってくる。
だが、今回の選択は。瑞希はローションを指差す。翔真がクスッと笑った。
「OK」
「悪趣味。楽しんでるだろ?」
「楽しまなきゃ損だろ。こんな絶好のシュチュエーション、逃すかよ」
翔真の指の腹が、瑞希の唇を押し潰すように撫でる。そのまま二本の指が、口腔へと押し込まれた。一瞬、目を見開いたものの、瑞希は翔真の意図を察して、観念したように目を伏せた。
翔真の指を濡らしていく。たっぷりと唾液を絡めて、舌で丁寧に舐め上げて。まるで翔真自身に施すみたいに。
「上出来」
満足そうに言って、翔真の長い指が抜け出ていく。薄く目を開けると、翔真が歯を使ってパッケージを開けている所だった。濡れた指先を後孔に押し当てられる。何度か探るように行き来した指が狙いを定め、固く閉じたそこを押し開いて潜り込んできた。粘膜に疼くような快感が生まれる独特の感触。
「……っ」
思わず上がりそうになった声を、寸での所で噛み殺す。慣らすように何度か抜き差しされて。一度引き抜かれた指が、二本に増やされて戻ってくる。指はまた静かに抜け出ていった。カプセルが埋め込まれたのが、瑞希にもなんとなくわかる。
翔真が教室の時計に目を向けた。
「溶けるまで10分くらいかかるぜ」
視線を瑞希に戻して、啄むようなキスをする。翔真が悪戯っぽく笑った。
「それまで、お前を気持ちよくさせてやるよ。こっちも可愛がってやらないとな」
翔真が瑞希のモノに手を伸ばす。翔真の熱い手に包まれ、軽く上下されただけで、勢いを失いかけていたソレは、瞬く間に硬くなる。
「……んぁッ」
何度か扱かれて、時々先端の丸みを親指で刺激される。割れ目に軽く指の腹を押し込まれると、ヌメりが広がる感触があった。馴染んだ手つきに、息が熱を帯びて、だんだん荒くなっていく。
気持ちいい。気持ちいいはずなのに……。なかなか達 けない。いつもならもう絶頂を迎えていてもおかしくないはずなのに。
教室という広い空間が落ち着かないのか。学校でイケナイことをしているという背徳心が邪魔をするのか?
「集中できないみてぇだな。まあ、慣れない場所だし、しょうがねぇか」
言いながら、翔真が自身の制服のネクタイの結び目を弛めて、首元から引き抜く。
「えっ?」
驚く瑞希に隙を与えず、ネクタイで目を覆われる。頭を片方の手で軽く抱えられると、ぐるぐると巻きつけられた。右のこめかみの辺りでぎゅっとリボンに結ばれる。視界を完全に塞がれて動揺が広がった。
「俺のことだけ感じてろ」
耳元に低い声で囁かれて、頬が熱くなる。
「そんな……」
無茶苦茶だと思いつつ。
再び瑞希を捕らえた手を上下に動かされ、先ほどとは比べものにならない快感が押し寄せる。
五感の一つを閉ざされただけで、他の感覚は何倍にも鋭敏になるらしい。
「っあ……ッ」
何度か刺激を与えられただけで、瑞希は呆気なく翔真の手を汚して昇りつめた。
瑞希は荒い呼吸を繰り返す。
先ほどから声を抑えることに必死だ。喘ぎ声なんて聞かれたいわけじゃない。だが、廊下を通る誰かに聞かれるかもしれない。スリルが倒錯的な興奮を呼んでいる。その事実に気づいて瑞希は困惑する。
「やっとイったな」
翔真の指が再び尻の窄りを探り、体の内へと侵入してきた。ローションの溶け具合を確かめるように、何度か行き来する。
「いい具合になってるぜ」
抜け出ようとした指がまた戻ってきて、ある一点を指の腹で押し上げた。瑞希はビクビクッと腰を震わせる。続けてまさぐるように擦られた。最も快感に弱い瑞希の泣き所。
「あッ、そこは、い……やっ、だって……」
「気持ちよすぎて、おかしくなるんだろ?」
男の性感帯を逆手に取られて、やさしく嬲られる。イッたばかりだというのに、瑞希の股間のモノは反り返って、痛いくらいに張りつめた。
「やめ……っ、これ、以上したら……」
(また、出るからっ……!)
翔真が息だけで笑うのがわかる。翔真の指が中から引き抜かれた。
「瑞希も心置きなくイけるようにしといてやるよ」
「え?なに……?」
勃ちあがって、はしたなく蜜をこぼす先端に、翔真が何かを被せる。薄い膜がくるくると根元まで下ろされるのを感じて、ゴムをつけられたのだと知った。瑞希が記憶する限りでは、自身にゴムをつけるのは初めてだった。
「装着完了。目隠しして、ゴムつけて。瑞希がゴムつけると、新鮮っていうよりなんか卑猥だな。なんならついでに手首も縛ってみる?」
好き勝手に言いながら、翔真が瑞希のネクタイの結び目に手をかける。瑞希の体が緊張で強ばったのが、翔真には伝わったらしい。
「嘘だよ」
ネクタイから翔真の手が離れてほっとする。今この場所で、これ以上のことはされたくない。
「それより、俺も限界なんだけど」
いつもはさほど意識しないのに、翔真がベルトを外す音、ジッパーを下ろす音まで生々しく聞こえた。翔真が準備しているのが、気配だけでわかる。
「うわっ」
強い力で膝裏をぐっと抱え上げられたと思ったら、膝が胸に付くくらいに押しつけられる。
足が床を離れて、一気に宙に浮く感覚に面食らった。しっかり机に面しているのは背中までで、腰から上は完全に浮き上がっている。
昼間の明るい教室で、脚をM字に開かれて、翔真の目に恥ずかしい所をすべて晒す屈辱。
目隠しされ、不安定に感じる体の置き所がないのか、少しでもバランスを崩すと転げ落ちそうで。
それでも体は待ちわびていた。翔真の熱く硬いモノで、体の中心を貫かれる瞬間を。
翔真の熱を入り口に押しつけられた。
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