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第4話
入学後の匡人はメキメキと実力をあげ一年ながらチームの主力として成長する。
入学当時は俺と殆ど変わらなかった身長も急激に伸び、体力もさることながら、土壇場に強い匡人のシュートはチームの士気をあげた。俺は試合中、匡人にパスを出す事が何よりも楽しくて、匡人の打ちやすい所へ完璧なパスが出せた時は興奮した。
でも匡人への気持ちを自覚すればする程、上手くいかない事も増えた。
試合や練習中は匡人が気持ちよくシュートできるように努められるがコートを降りると素直になれない自分の性格が災いして、匡人だけには横柄に接してしまう。
「おい、匡人! コーラ買ってこい! 赤い方のやつな」
「動いた後に飲むとまた腹痛くなりますよ」
「うるさいな! 買ってこいって!」
いつものごとく僅かに眉をひそめて俺の手渡した小銭を受け取り駆けていく後ろ姿を見ながら、またやってしまったと後悔する。割と面倒見がいいと言われているくせに匡人相手には上手くいかない。
練習が終わって他の部員達は帰っていった。俺はいつも少し自主練して帰るのだが、そのやりとりを見ていたキャプテンの寺本が大きな溜息をついた。
「なぁ、お前と岸谷って何かあるのか? お前、いつもあいつにだけきついだろ」
それは寺本だけでなくおそらく他の部員もそう思っている。副キャプテンという立場上、他の部員と同じように接しないといけない事も、それが部の空気を乱してしまう事も分かっているのだけど体が勝手に反応してしまうのだ。
先に帰る寺本から体育館の鍵を預かって、自分自身の不毛さに落胆しタオルを被っていると目の前にスポーツドリンクが差し出された。
「先輩。これ」
「赤いやつじゃない」
「まだ自主練するんですよね」
「……お前はいつも俺の欲しい物買って来ない」
「スポドリだって結局は飲むんでしょう?」
また眉をひそめた匡人を見てこうじゃないんだと思うけど、どうしても“ありがとう”の一言だけが上手く言えない。
こんな態度、匡人に嫌われるとか以前に人として最低なのに。
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