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第7話
「強いて言うなら素直な人ですかね。あと面倒くさくない人です」
「なんだよそれ……」
うんざりとした顔で言われると、自分の事を言われているように錯覚して結構こたえた。
そしてまた言わなくてもいい言葉が口をついて出てしまう。
「やっぱりお前は人と付き合わない方がいいかもな!」
どうしてそんな事を言ってしまうんだろう。
「お前優しくないもん」
「人をこき使っておきながらよく言いますね。先輩だって優しくないでしょう」
「俺はお前にしか言ってないし」
「そうですね。僕だけですね」
「お前生意気だし、いつもコーラ買ってこないし、もっと愛想よくしないと誰からも好かれないぞ! だからお前なんか好きになるやつなんていない」
なんて横暴な事を言いながら顔を上げれば、匡人は凍りつくような冷たい目で俺の事を見ていた。
「……いい加減にしてもらえませんか」
その言葉に何も言い返せないくらい萎縮してしまう。
すると匡人は眉をひそめると冷たい眼差しを向けたまま静かに口を開いた。
「僕の事が気に入らないのはわかってますけど、それ以上言われると不愉快です」
「いや、違……」
違うんだと心の中で叫んだ所で、もう遅い。
「僕の事が嫌いなら関わらないでもらえますか。僕ももう先輩とは関わりたくありません」
取りつく島もなく、その視線からは嫌悪感しか漂ってこなかった。
気を抜くと涙が出てきそうになって堪える為に唇を噛めば、口の中に鉄の味が広がる。
匡人は何も言い返さない俺に溜息をつくとそのまま去っていった。
足音が遠ざかるとよろよろとその場に座り込んでしまう。
鼻がつんとして、ぼとぼとと零れ落ちる涙で地面の色が変わっていった。
最初から見込みがなかった事とはいえこんな結末は望んでいなかったのに、どうして俺は普通の会話すら交わす事が出来ないのか。
その日は、自分で自分を殴りたくなった。
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