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第10話

 それから俺は心を落ち着かせようと必死に一年過ごしてきたんだ。  それなのに、なぜ今日なのか。  インターホンがなりドアを開けると、風と共に桜の花弁が舞い込んできたのと同時に学生服の匡人が目に入った。  あまりにも驚きすぎて言葉も出てこない俺をじっと見据えると、匡人は静かに口を開く。 「責任をとってください」  責任? 意味がわからずに呆然としていると、匡人は眉をひそめて一歩歩み寄れば反射的に俺は一歩下がってしまう。それが気に食わなかったのか今度はズカズカと部屋に入ってきた。 「ま、待って。なんで入ってくるんだよ」 「先輩がだんまり決め込んでいたからですよ」  また背が伸びたのか一年で少し大人っぽくなった匡人は相変わらず生意気に冷たく言葉を言い放つ。 「そ、それよりなんでお前がここにいるんだ!? し、しかも制服で」 「卒業式が終わってそのまま来たので」 「っていうか、なんで俺の家知ってんの!?」 「調べたに決まってるじゃないですか」 「な、なんで」  すると匡人は眼光をより鋭くさせた。 「確かめたかった事があるんです」  その眼差しに怯んでしまいそうになる。 「先輩は僕の事が好きだったんですか?」 「…………」  意味がわからない。責任ってなんだ?  俺がお前の事を好きだったかどうかを今更確かめてどうなる。終わった事なのに。  どうしてそっとしておいてくれないのか。  いろんな感情がめぐる中で、小さな苛々は次第に大きくなっていく。 「なんなんだよ! 何しに来たんだ。笑いに来たのか? 仕返しか!?」 「責任を取ってほしい」 「だから責任ってなんだよ! 気持ち悪くて悪かったな。放っといてくれよ! お前は別に俺と関わらなくても生きていけるだろ!」  匡人の体を押しながら玄関のドアノブに手を伸ばそうとしたところで、その手を匡人に掴まれた。

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