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「ゲス」 深夜まで営業している近隣のコーヒーショップ、向かい合ってアイスティーを黙々と飲んでいた琉真に一言ポツンと言われて風見は失笑した。 「まだ独り身だし不倫の経験はないんだけど?」 「ゲス」 自分より年上の客層で賑わう店内、ろくに面識のない年上イケメンを前にして臆するでもなく別れた原因を知ってゲスゲス言い切る男子高校生。 麻貴より一つ年上、ゴルフやらチェスやら盆栽やら、専門分野のみならずご厚意にしてほしい相手の趣味も網羅している風見。 愛用しているオリエンタル系の香水を見事にその身に馴染ませていた。 精悍に整った顔立ち、引き締まった唇、艶めくバリトンボイス。 熱帯夜には少々刺激が強い感が否めない。 「麻貴にもあるよ、そういう子供っぽいところ」 「……こどもっぽいとか、そんな問題じゃない」 「この業界、珍しくも何ともない、平然と横行してるっていうのにね。まぁ仕事上では目を瞑ってるけど。プライベートでは目くじら立てちゃって」 この人、やっぱり麻貴さんに未練がある。 それで結婚するとか意味がわからない。 「それはそれ、これはこれ、じゃない?」 「……麻貴さんに近づくな」 「いや、俺ね、ちゃんと言いたいだけなのよ。今までありがとうって。それをアイツが一秒も待たずに振り切ろうとするから」 「……じゃあ、俺が伝えとく。もう来るな」 「ま。一年と三ヶ月のお付き合い、その区切りとして。最後の一夜を華々しく過ごしてもいいかなって」 琉真は風見を睨んだ。 「見納め」 完全に面白がっている風見はさり気なくテーブルに身を乗り出すと無愛想丸出しな琉真の耳元で囁いた。 「麻貴が一番どこで感じるか。教えてあげようか」

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