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「ん……っ」 独立した浴室に奏でられる上擦った微かな声。 歪に波打つ褐色の背中。 流しっぱなしのシャワーの熱さとはまた別の、利き手に一心に慰められている、健全十代の紛れもない火照り。 昨日から麻貴のワンルームに泊まっているものの営業勤務で多忙な恋人の疲労を考慮して。 欲してやまない彼がすぐそばにいながらも下心を抑え込み、お泊まり初日となる昨夜、悪いと思いつつトイレで自己処理を。 「はぁ……」 普段は美容師の両親によって毛先まで念入りに整えられている髪を満遍なく濡らし、タイル壁に片肘を突いて、ため息。 「いっしょの時間」は甘い甘い想像を裏切るくらい、しょっぱくて、酷だった。 こんなに何かを我慢するのって初めてかもしれない。 こんなに欲しいと思えるものもなかったし。 親いわく昔からあんまりワガママを言わなかったみたいだし。 『……麻貴さんに近づくな』 誰かに対してあんなに強い敵意を持ったのも初めてだ。 きっと、あの人は酔っ払った麻貴さんを知ってるだろう。 同年代で、似たような仕事、いっしょに飲んだり……そのまま……。 俺だけしか知らない麻貴さんがほしいな。 誰も知らない麻貴さんを俺にだけ見せてほしいな。 「ン……麻貴さん……」 タイル上でぎゅっと拳を握り、奥歯を食い縛り、琉真はペニス先端をさらに激しく……。 「俺のこと呼んだ?」

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