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ふぇち★フェチ!-4
「伊織が合コン来るって珍しくない?」
土曜の夜七時五分前、すでに多くの客で賑わっている創作料理の人気居酒屋店。
個室である掘りごたつ席の隅っこについて今日のおすすめメニューを寡黙に眺めている伊織。
自分の名前が聞こえたにも関わらず会話に一切加わろうとしない彼に幹事を含む同席者三名は顔を見合わせた。
「このコ自己紹介とかできんの?」
「つぅか誰が声かけたの?」
「俺でーす」
「「「やっぱまっくんか」」」
伊織の隣に座っていた松島はピースサインして同席者三名にかる~いカンジで告げる。
「一人足んないって言うから誘ってみました?」
そもそも松島自身も今日の飲み会メンバーに一昨日追加されたばかりだった。
最初は3:3だったらしいが、相手側が急に五人と増加し、幹事は何とか松島を補充したものの残り一人を調達するのになかなか苦戦して。
「じゃー俺が誰か一人見つけてくるわ」
よってバイトをしていない、土日は比較的空いている、無口で冷めてて近寄りがたい伊織がチョイスされたというわけだ。
友達、ずっと目をつけていた相手、そして現在進行形で性的な関係にある松島が合コン参加することに当然伊織はいい顔をしなかった。
『これまでだって何回も行ったのに何で今回は嫌なわけ』
『前と今では状況違うし』
『じゃー伊織も行こ?』
『合コンなんて一度も経験ない』
『あれ、やっぱ伊織ってホモなの? 女子とお付き合いしたことないの?』
『なんでニヤニヤしてるの、松島』
『べーつーに?』
「まっくんの隣の人、名前なんだったかなー?」
「伊織クンでしょっ」
「伊織クン、しゃべんないね、つまんない?」
「こっちのアボガドうふサラダ、まだ食べてないよねー、ハイっ」
「地元ってどこ?」
「地元、ココ」
「「「「「へーーーーーー!」」」」」
合コン初戦の伊織、本日モテモテ、だ。
「伊織クンったらモテモテだねー」
隣に座った松島は何故か自分の手柄ヅラして相変わらずニヤニヤしている。
「そうなの? よくわからない」
「お持ち帰りできちゃうかもよ」
「そんなこと別に、」
「ねーねー、今日、伊織にお持ち帰りされたいコいるー?」
カンパリオレンジのグラス片手に松島が質問すれば女子五名全員が手を挙げた。
「やったね、伊織きゅん、6Pできんじゃん」
「松島、二杯目でもう酔ってるの?」
「俺もまぜて、7Pしよ」
「なんで俺ら除外してんだッ、まっくんのばかッ」
「キミら三人で3Pしたら。俺と伊織とみんなは仲良く乱交オールしよー!!」
店のオリジナルカクテルを飲んでいた伊織は隣で下ネタ連発する松島に肩を竦め、向かい側で飲み放題ドリンクメニューをこぞって覗き込んでいる女子らをチラリと見た。
どのコも似たような色の髪、化粧、服、爪。
つまりみんな松島のタイプ。
松島こそ誰かお持ち帰りする予定かもしれない。
何気にもう相手全員とLINE、交換済みだし。
「みんなの生足見たいなー」
嫌だけど。
これ以上、俺がとやかく言う筋合い、ない。
俺と松島は付き合ってるわけじゃないから。
『伊織のちんぽぉ……俺んナカで動いて……っ』
松島にとっては普段味わえない刺激が目当てのお手軽な関係。
そんなところ、なんだろうな。
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