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第2話 自覚

 俺、新堂勇人と森本貴仁は幼馴染だった。  だった、というのは、俺が途中で転校したから。理由は単純、親の仕事の都合ってやつだ。  小学校の中学年で他県に引っ越して行った俺と貴仁の繋がりは、その場で切れる――はずだった。  でも先月、高校二年の6月に、俺はまたこの土地に戻ってきた。  クラスメートの中に貴仁の顔を見つけたときは、懐かしくて嬉しかったもんだ。  貴仁のことは、一目で気付いた。  だってコイツ、俺が引っ越したときとほとんど変わってねーんだもん。  背は低いままだし、顔つきだってほとんど変わらず面影残しまくってた。  ただ、明るくていつも笑ってたはずの表情が、ずっと暗いままだったのが気になった。  俺が話しかけても、どこかよそよそしかったし、ガラの悪い連中とよく一緒にいたのも引っ掛かった。  それがイジメだって気付いたのは、すぐだった。  主犯格は山本一馬。  地元の名士の息子だとかで、好き勝手暴れて教師も見て見ぬふり。最低最悪のドラ息子ってやつだ。 「俺が話つけてやろうか?」  そう貴仁に言ったこともある。  でも、貴仁は俺の言葉を拒絶した。 「……いいよ。僕の問題だから……。もう、僕にはかかわらないで……」  目を伏せながらそんなことを言われても、納得することなんかできない。  かと言って、本人が拒否したのに、俺が勝手に動いていいのか?  なにが正解か分からずに、どうしていいか分からずに、ただ手をこまねいて日々が過ぎて行く。  大して良くもない頭で、ずっと考えてた。  なんで俺は、こんなにも貴仁が気になるのかを。  理由はいくつも浮かんだ。  幼馴染がイジメられてるのが見過ごせないから。  イジメ自体を見過ごせないから。  親の威光で好き勝手やってる山本がムカつく。  その取り巻き連中もムカつく。  つーか、なんで貴仁なんだよ!  他にいくらでもいるじゃねーか!  貴仁は、チビで、軽く殴っただけでも飛んでいきそうなほど細い。  なんでこんなヤツに手を上げるんだよ!?  貴仁の可愛らしい顔に痣ができてるのを見たときは、殺意にも似た感情が沸いて、押さえ込むのに必死だった。  ……可愛い……?  俺は、貴仁を、可愛いって思ってるのか……?  昔、転校するまでは、俺の後を付いて来る貴仁をかわいいと思ったことがある。  でもそれは、親分子分みたいなかわいさで、今の貴仁に感じた可愛いって感情とは明らかに違う。  まさか、俺は……。  自分の心臓の音が耳に届く。  まるで警鐘のように鳴り響く。  でも、もう遅い。  俺は……自覚してしまったのだから。  だから、放課後、貴仁が山本たちに連れて行かれるのを見たとき、俺は駆け出したんだ。  貴仁を助けるために。  結果は散々だった。  俺もボロボロにされたし、なにより、助けたいって思ったアイツを……泣かせてしまった。  それでも俺は……。

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