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第5話☆
「ぬ、脱がなくていいです!
っていうか、熱があるのに裸になったら悪化します!」
叫びながらも僕は、服を脱がせようとしてくる吉泉さんの手を必死に払いのけようとしたのだが、抵抗むなしく、僕のカッターシャツのボタンは全部はずされ、前が全開になってしまった。
「ああ、かわいそうに、こんなに赤くなって。
よっぽど熱いんだな」
吉泉さんは棒読み気味に言うと、冷たい手で僕の体をすっとなでた。
「ひゃうっ!」
その途端に自分の口からありえない声がもれて、僕は慌てて両手で口を押さえる。
吉泉さんはそんな僕の反応にはかまわずに、僕の腹や脇腹をなで続けている。
僕はどちらかと言えばくすぐったがりなので、普段ならそんなことをされたら笑い転げてしまうところだ。
それなのに今はなぜだかくすぐったさではなく、ぞわぞわとした寒気のような、それでいて気持ちがいいような奇妙な感覚に支配されている。
それは例えていうならまるで、オナニーしようとする時に最初にチンコをひとなでして、感じ始めた時のような。
……って、おかしいだろ!
本当にチンコ触られているわけでもないのに!
けれども事実、吉泉さんに触られた僕は、それに近い快感を得ているのだ。
熱のせいか体はまるで自分のものじゃないみたいで、異常なくらいに体がたかぶっていくのを、自分ではどうにも出来ない。
そこまで考えて、僕ははっと気付く。
「まさか吉泉さん、僕に何か飲ませて……?」
考えてみたら、ここに来てから吉泉さんが入れてくれたコーヒーを2杯も飲んでいるし、チョコだって食べている。
もし仮にあの中に媚薬でも入っていたとしたら――一介の高校生が媚薬を手に入れられるもののかどうかは分からないが――僕の体がこんな状態になっていることにも納得できる。
僕がそうつぶやくと、吉泉さんはチッと舌打ちして、僕をなでる手を止めた。
「さすがにばれるか。
確かに飲ませたよ。
2杯目のコーヒーに、うちの化学部特製の媚薬を入れさせてもらった。
副作用はなく1時間ほどで効果は切れるが、その間は感覚が敏感になって感じまくる薬だそうだ。
飲ませたからには、ちゃんと責任もって面倒みてやるから、お前は諦めておとなしく感じまくっておけ」
そう言うと吉泉さんは、薬のことがばれて遠慮がなくなったのか、片手で僕の乳首をきゅっとつまみ、もう片方の手であろうことか僕の股間のモノをズボンの上から軽くつかんできた。
「やぁっ……!」
嫌だと言っても媚薬の効果は絶大で、僕のモノは吉泉さんにちょっと握られただけで一気に張り詰めてしまう。
「つらそうだな。
今、楽にしてやるから」
今度は棒読みではなく、明らかに嬉々とした声で言った吉泉さんは、あっという間に僕のズボンとパンツを脱がせてしまった。
ぷるんとはみ出した僕の完勃ちしたモノを見て、舌なめずりせんばかりになっている吉泉さんは、今の僕には心底恐ろしかった。
「ひ、卑怯者!」
まったくどうして僕は、この人のことを江戸時代の武士のようだなんて思ったのだろう。
この人は武士は武士でも武士道精神など欠片も持ち合わせていない、謀略裏切り掠奪上等の戦国武将だ。
「こ、こんなことまでして、僕を、生徒会長、に、したいんで、すか……!」
吉泉さんが丸出しになった僕のモノと乳首をいじりまくっているので、言葉は切れ切れになってしまったが、それでも僕は精一杯吉泉さんをにらみつけて抗議する。
「生徒会長にしたいから、こんなことをしているわけじゃない。
お前にこんなことをしたいから、お前を生徒会長にしたいんだ」
「……は?」
いきなりわけの分からないことを言い出した吉泉さんは、僕の体を触り続けながら言葉を続ける。
「お前は一年だから知らないかもしれないが、次期副会長になった人間が『会長に指名したい』っていうのは、この学校では最上級の告白なんだよ。
この仮眠室は会長と副会長だけが使える部屋で、ここの鍵を持てるのが副会長の特権で、だから副会長が『会長に指名したい』っていうのは、会長と副会長になって二人でこの部屋でヤリまくりませんかっていう意味なんだ」
「えええっ! そんな無茶苦茶な!」
いったいどこの誰がそんな馬鹿げた告白があると思うだろう。
だいたい、いくらこの高校が男子校だからと言って、男が男に対して最上級の告白とか頭がおかしいとしか思えない。
「えっ……っていうか告白?」
「そうだ。
お前は分かってなかっただろうが、俺はさっきお前に告白したんだ」
いつの間にか手を止めた吉泉さんが、真剣な顔で僕をじっと見つめつつそんなことを言うので、僕はわけもわからずドキッとしてしまう。
「この学校で副会長になりたいってやつは、たいてい好きなやつがいて、そいつに告白するために死にものぐるいで副会長になろうとするものなんだが、俺の場合はただ単に副会長という仕事がやりたくてなっただけのつもりだった。
けど、結局は俺も歴代の副会長と同じだったな。
こうなってみれば、お前に告白するために、副会長になったようなものだ」
そう言うと吉泉さんは、僕の顔を両手で挟んで、あの端正な顔を近づけてきた。
「会長が言ってた『副会長は会長の奴隷だ』っていうのはある意味間違ってないんだよ。
ただし、奴隷は奴隷でも、恋の奴隷ってやつだ。
一目惚れなんだよ。
体育祭で転んで、涙目になりながら走っているお前を見て、自分の手でお前をあんなふうに泣かせたいと思ったんだ」
「ぎゃーっ!」
途中までは真剣だった告白に危うくくらっときそうになったが、吉泉さんの最後の一言で僕は正気になった。
慌てて逃げようとしたが、媚薬でふらふらになっている僕がヤル気まんまんの吉泉さんから逃げられるはずもなく、たやすく押さえ込まれた上に、まだ袖を抜いていなかったカッターシャツで両腕を拘束されてしまった。
「それ、一目惚れじゃなくて、完全にいじめっこの理論ですよね!」
「いや、一目惚れだ。
その証拠に俺は別にお前を痛めつけて泣かせたいわけじゃなく、性的に泣かせたいだけだから」
「同じです!! っていうか、なお悪いです!!」
「いい加減、諦めて俺に泣かされろ。
この部屋の鍵は1本しかないから助けは来ないし、防音だから大声を出したって外には聞こえないぞ」
「ひーっ!」
そんなことを言われても諦められるはずもなく、叫びながらバタバタと暴れたが、吉泉さんはそんな僕の足を押さえると、あろうことか立ち上がったままだった僕のモノをぱっくりとくわえてしまった。
「やっ……! だめですって! ……あっ…やっ……」
初めは抵抗していた僕の声は、吉泉さんにくわえられているうちに、だんだん甘ったるいものへと変わっていく。
媚薬のせいなのか、それとも吉泉さんがうまいのか、吉泉さんにくわえられた僕のモノはあっという間にその口の中ではじけてしまった。
「……げっ! 飲んだんですか?!」
達した快感で体を震わせていた僕の耳に吉泉さんがゴクリと喉を鳴らす音が聞こえたので大声を上げると、吉泉さんは平然とした顔で答える。
「惚れていると言っただろう。
好きな奴が出したものを飲むのは当然だ」
そう言って不敵に微笑んだ吉泉さんは壮絶に美しくて、その美しさが逆に怖い。
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