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「ファミレスでは大丈夫だった? 誰かに声かけられなかった?」 浅海の過保護ぶりを匂わせる問いかけに「大丈夫です、特に何も」とまひるは素直に答えた。 過保護になるのも無理はない。 登下校で乗り降りする電車でまひるは度々痴漢に遭い、過去に遡れば誘拐されかけているのだから。 まひるはそのことを友達や家族に黙って生きてきた。 男である自分自身がそういう目で見られることにコンプレックスを抱き、誰にも知られないよう、ひた隠してきた。 「本当に?」 たった一人、浅海を除いて。 「はい、大丈夫です、浅海さん」 オレのことを助けてくれた浅海さん。 浅海さんだけは他の男の人と違う。 何の不安もなく、安心して、くっついていられる……。 「でも、本当に、次からは連絡してほしい」 こんな風に膝に乗っけられると、抱きしめられたりキスされると、胸が壊れそうなくらいどきどきするけど。 「わかりました……っ、浅海さん……」 また頬擦りされてまひるはクスクス笑った。 「会いたかったよ、まひる君」 耳元でそう囁かれると甘い眩暈に心を貫かれた。 隅々まで熱せられていた耳たぶをやんわり甘噛みされる。 自分より大きな手で体の線をなぞられる。 またゆっくりキスされる。 先程よりも奥まで念入りに。 「んっ……ン……っ……ふ……ぁ……」 行き場に迷ったまひるの両手は浅海のワイシャツを弱々しげに掴んだ。 舌の先まで優しい浅海に口内を愛撫されると、一段と力を込め、唯一身を委ねることができるオトナの男に縋りついた。 下顎を辿って首筋に届いたキス。 「んっっ……」 「くすぐったい?」 言葉を発すると妙に甲高い声色になってしまいそうで、まひるはコクコク頷いた。 「ここは……?」 まひるの唇に再び戻ってきた浅海の唇。 軽く触れ合う程度の浅い接触に頬を火照らせ、まひるは、声が上擦らないよう慎重に言葉を紡いだ。 「あったかくて……きもちいいです……」 今度はちゃんと最後の一文字まで聞き届け、浅海は、浅い深いキスを丁寧に繰り返した。 「ん、む……っ……はぁ……浅海さん……っ……んぷ……」 まだ不慣れな抱擁に時に強張りがちな華奢な体から緊張感を遠ざけるように。

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