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まひる君も、被害に遭った女の子も、修了式には出席できなかった。 相手は器物損壊罪で現行犯逮捕となり、保護者も呼ばれ、警察署で長時間に渡る事情聴取を受けたそうだ。 同様の手口で着衣を切り裂かれる事件がこの短期間で多発していたらしい。 もしかしたら、捕まったその相手が、一連の犯行の……。 「大分あったかくなってきましたけど。風はちょっと冷たいですね」 街路樹の葉を散らして吹き抜けていった春風に首を竦め、寒そうにしているまひるを見下ろし、浅海は思う。 もしも、あの場で、犯人が逆上していたら。 スカートを切り裂くために持ち歩いていたハサミを違う意図でもって振るっていたら。 もしもの恐怖に射竦められた浅海は、その場でまひるをあらん限りの力で抱きしめたい欲求に駆られた。 「浅海さん?」 いきなり立ち止まった浅海に首を傾げ、きょとん顔したまひるは年上彼氏を見上げた。 「まひる君、今ここでぎゅってしてもいい?」 「え……だめです」 多くの人々が行き来する白昼の街角で何を言い出すのかと、戸惑って困り顔したまひるに、浅海は冷静さを心がけて続ける。 「じゃあウチに着いたらすぐ抱きしめさせて」 「……どうしてそんなこと予告するんですか」 「予告しないでいきなり玄関で抱きつかれたらびっくりするかと思って」 「……玄関でぎゅってされるんですか、オレ」 まひるはハグ予告されて再び赤面した。 「どういう気持ちで浅海さんのおうちに向かえばいいんですか……」 「抱きしめられる心づもりでいて」 「それってどんな感情ですか……」 早く、今すぐ、まひる君と二人きりになりたい。 全身でまひる君を実感したい。 いや、やっぱりもう無理だ、ウチまで我慢できない。 「まひる君」 「次は何の予告ですか……」 「今からホテルに行こう」 まひるはこれ以上ないくらいにまっかっかになった。

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