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閉ざされたドア越しに廊下を歩く宿泊客の笑い声が聞こえてきた。 「ん……」 整然と設えられたベッドの上。 浅海に腕枕されていたまひるは束の間の眠りから目を覚ました。 深いブラウンとオフホワイトが壁やインテリアの色合いを占めるシックモダンなダブルルーム。 開放的な眺望が観賞できる窓辺は惜しいことにカーテンで覆われたままだ。 意味深な着衣の乱れもないまひるは小さな欠伸をし、同じくアウターを羽織ったままベッドに横になっている浅海を寝惚け眼で見、どきっとした。 ……浅海さんも眠ってる……。 『このままベッドに運んでもいい?』 宣言通り、まひるをベッドへ運んだ浅海はそこでも頑なに抱擁を続けた。 お姫様抱っこには大いに驚かされたまひるであったが、寝心地のいいベッド、やっぱり安心する懐に次第に眠気を誘われて……そのまま寝てしまった。 どれくらい寝てたのかな。 日帰りのプランみたいだけど、何時までここにいていいんだろう。 浅海さんの寝顔って初めて見る……。 眼鏡したまま寝るって、普通なのかな、危なくないのかな……。 そう。 本人は眠るつもりではなかったのだが、まひるの温もりを再三確かめて「もしもの恐怖」からやっと抜け出した浅海は、無防備な寝顔を満足げに眺めている内に、うつらうつら、日頃の疲れが祟って夢の中へ……。 ケガするかもしれないし、外そう。 まひるは微かな寝息を立てている浅海の顔へ慎重に手を伸ばし、すでにずれ落ちている眼鏡に指先が触れようとしたところで、ぴたりと一時停止した。 浅海さん……。 声にすると起こしてしまいそうで。 胸の内でそっと呼号して。 あまり免疫のない衝動に突き動かされるがまま、まひるは、すぐそばで眠る浅海の唇にキスをひとつ……。 「ん……? まひる君……」 「っ……ごめんなさい、浅海さん」 「あれ、俺、いつの間に寝て……今……まひる君、もしかして俺に……?」 「ごめんなさい」 ヘッドボードに立てかけられていたクッションを咄嗟に掴んで顔を隠したまひるに、眼鏡をかけ直した浅海は…………。

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