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花火大会は大盛況だった。
大盛況ともなれば帰りが困難になるのも必須で。
「人、多いですね」
夏だったなら浴衣が見れたかも……なんて淡い望みを抱いたものの、極々普通のシンプルな冬コーデ私服のまひるはこれまた魅力的だった。
キャメルのショート丈ダッフルコートにチェック柄のマフラー。
細身のスキニーには単色コンバースを合わせて。
人いきれの熱気に中てられた肌は夜目にも仄かに艶やかで。
「大丈夫? 具合悪くない?」
浅海が問いかければコクンと頷き、控え目な笑顔を浮かべて「冬の花火、初めて見れてテンション上がってます」と、はにかんだ。
……ゴクリ。可愛い。
「あーー……今、電車とか相当混雑してるだろうから。いっそ今日はタクシーで帰ったら?」
家路につく人波を避け、コンビニの駐車場で足を止め、自宅までは歩いて帰宅できる浅海がそう言えばまひるは返事を言いよどんだ。
「うん……」
「お金、足りない? 出そうか?」
「そんな。ダメです。えっと」
「うん? どこか店に入って時間潰す?」
「……おうち、とか」
もじ、もじ、うつむきがちでいたまひるは上目遣いにチラリと年上の浅海を見上げて言った。
「浅海さんの、おうちとか、行ってみたい、です」
浅海は見事に凍りついていた。
「……浅海さん……」
初めてまひるを自宅に招き、内心花火大会時よりもテンション上昇、それを必死でひた隠して冷静を気取って「飲み物準備するから」と男子高校生から距離をとってキッチンで落ち着こうとしていたら。
ぎゅっっ
背中、ではなく、あの日と同じように浅海の片腕にしがみついてきたまひるの両手。
「浅海さん」
どき、どき、これまでにない思い切った行動に出て最早立っているのがやっとなまひる、年上リーマンの名前を口にするので精一杯だった。
初めて自分を助けてくれたオトナの人。
恐怖や不安を取り除いてくれた人。
かつてないバラ色の時間をくれた人。
「浅海さん」
震える唇で自分の名を呼び続けるまひるに、ただただしがみついてくる男子高校生に、浅海のテンションは秘かに臨界点に達した。
「まひる君」
浅海に名前を呼ばれたまひるは頑なに伏せていた顔を怖々と上げた。
「今日、泊まる?」
お泊まりのお誘いにまひるは黒目がちの双眸を見開かせた。
眼鏡をかけた、自分より背の高い、いつも優しい眼差しで自分を見守ってくれている年上の男としばし視線を通わせて。
「……おうち、泊まりたい、です」
コクンと頷いた……。
「ン……っン、ん……ん……っ」
どうしよう。
立てない、こんなの立ってられない。
口の中が浅海さんでいっぱいで。
次から次に溢れて受け止められない……。
「ぷぁ」
ゆっくりな動きでありながらも口内に長居する浅海の舌先にまひるの震えは止まらない。
これまでに感じた覚えのない甘い甘い震え。
ただただ恐怖に感じていた年上の男達、嫌悪して疎んじていたカテゴリー。
浅海だけが違う。
自分のすべてを委ねたくなる。
「あさ、み、さ……」
「……苦しくない? 嫌じゃない?」
「ッ……ヤじゃ、ない……浅海さん」
屈んでまひるにキスしていた浅海は彼を寝室へ連れていく。
明かりも点さずにベッドへ横たえると、ギシリ、すぐさま覆いかぶさってキスを再開する。
堪えてきた欲望が口元で爆ぜる。
待ちに待っていた瞬間を心身共に痛感する。
唇から首筋へ移動したキス。
ニットを捲って肌の露出を増やす。
愛情溢れる手つきで胸元まで曝す。
「あ……」
二つの突起を明らかに見つめている浅海に唇をびっしょり濡らしたまひるはやっと恥ずかしさを覚えた。
「誰かに触られたこと、ある?」
ベッドに背中を沈めたまひるはかろうじて首を左右に振った。
「……浅海さんが、初めて、です」
熱を孕んで重たげな空気にピンと張り詰めた初心な乳首に。
浅海はキスした。
ゆっくり、優しく、丁寧に。
ヒイキせずに右も左も等しく。
誰にも蹂躙されたことのない純潔を思いのまま味わった。
「っ~~~……ッ、ッ……ん、っ、ンンンっ」
まひる君にこんなこと。
十歳も年下の高校生に、男に、こんなこと。
止められない。
もっともっとしたい。
今、怖いくらいまひる君を求めてる……。
「熱い……」
つやつやぷるんな十代乳首に夢中になっていた浅海が視線だけ頭上に投げやれば。
半開きの唇と双眸を興奮ですっかり火照らせたまひると目が合った。
「こ、こんなかんじ……オレ、初めて……お腹の下が……キュッてなるの……」
お腹の下って、それは。
「それってこの辺……?」
スキニー越しに腹の下をそっと撫で上げてみる。
「あ」
「まひる君の、硬くなってるね」
「ッ、ン」
今、まひる君、俺の台詞にも感じて……。
「っ……ごめんなさい」
自分自身の反応に怯えたまひるは真上に迫る浅海に詫びた。
「変です、オレの体……浅海さんにだけは変になっちゃいます……ごめんなさい……」
ぽろぽろと涙まで零して居た堪れなさそうにしているまひるに、浅海は、胸を抉られる。
「もっと変になっていいよ?」
切なそうに歪んでいる顔を覗き込みながら下肢への愛撫を続けた。
「あ、だめ、そんな、さわられたら」
「もっと変になる……? いいよ? 誰も知らないまひる君、俺にだけ見せて?」
「ぁ……っ浅海、さ、んっ……ンン……ぅっ」
また深くキスされてまひるは正面から浅海に抱きついた。
服の内側に潜り込んできた利き手が直に熱源を握りしめる。
そのまま上下に擦られて、熱烈な愛撫を集中的に施されて、まひるの口元はしとどに濡れた。
「んーーーー……っっ」
浅海に深く唇を捕らわれたままビクビクと腰を痙攣させ、まひるは、愛しい年上リーマンの手に絶頂を教え込まれた……。
浴室で自己処理に励んだ浅海が部屋に戻れば先にシャワーを浴びていたまひるがソファでちょこんと待っていた。
「やっぱり俺の服ぶかぶかだね」
浅海の家着スウェットをだぼっと着ていたまひるは嬉しそうにクスクス笑う。
「浅海さんの服、着られるなんて、嬉しいです」
どうしよう。
処理してきたばかりなのに、また処理したくなってきた。
「……今日は何だか冬の割に暑いね。もう一回シャワー浴びてこようかな」
「え。また……ですか? じゃあオレも……」
「え?」
「……オレも、浅海さんといっしょ、もう一回シャワー……だめですか?」
こんな試練、俺の理性はもう持たないかもだけど、それでいいかな、まひる君?
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