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「これからどうしようか」
お勘定を済ませて店を出、ガードレールに寄りかかって待っていた伊月に葉一が問いかけてみても、返答なし。
明後日の方向を見てる伊月くん、その角度、やっぱりイケメンだなぁ。
「葉一くんの家」
端整な横顔をぼんやり眺めていた葉一の目許が俄かに引き攣った。
「……おれのウチ?」
「うん」
「あー。何か買い物とか、見たいモノなかった?」
「葉一くんの家行きたい」
こうなると年下彼氏の選択肢は一つのみ、他の選択肢はあっさり却下する、頑なに譲らない。
ああ、でも。
お姉さんと会ったばかりで申し訳ないというか。
だって、ウチに来たら、伊月くん、ソレまっしぐらで。
もうソレしかないみたいな……。
「行こ?」
イケメンだからって高校生にこうも主導権握られていいのか、俺。
自堕落な道を歩ませていいのか。
お姉さんと会った直後だし、いつまでもワガママきいていないで、そろそろ年上らしいところも見せないと。
「うん、わかった」
「途中でコンビニ寄ろう」
「……いや、あの、ストックあるから」
「あ、そっか」
違う違う違う違う!
ストックがどうとかじゃない!
今日は断固として毅然と拒否して清い一日を押し通すんだ!
「こ、こらぁ、伊月くん……っ」
玄関ドアをロックした次の瞬間、後ろから伊月に抱きしめられて葉一は断固として毅然と拒否した。
「だ、だめっ、今日はシないよっ、今日はシない日!」
毅然とした態度であるのかどうかは怪しいが、いつもは美形パワーに平伏して受け入れている行為を一生懸命拒んだ。
「どうして?」
「どうしてって、ウチに来る度にシてばっかりで、そういうだらけた性生活はっ、教育上よくないと思うっ」
「ふぅん」
淡々と相槌を打った伊月は。
「こちょこちょ」
何を思ったのか葉一にこちょこちょ攻撃を仕掛けてきた!
「えっ、急になにっ、なんでこのタイミングっ? ちょ、伊月く、っ、ひぃっ、待って待って……!」
「こちょこちょこちょこちょ」
「ひ~~~っ」
容赦ないこちょこちょ攻撃に葉一は身を捩じらせた、脇腹を盛大にくすぐられてくすぐったくて敵わず涙まで出てくる、仕舞いには耐えられずに廊下に倒れ込んだ。
「うひ~~っ、やめっ、やめて伊月くんっ、しぬ~~っ……って……あれ……?」
いつの間に中断されていたこちょこちょ攻撃。
すっかり涙目になった葉一がぎこちなく顔を上げれば、自分に覆いかぶさっている伊月とばっちり目が合った。
「葉一くん、おれのこと拒絶できる?」
麗しのサイボーグじみた端整フェイスは悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
猛烈な胸キュン感に心臓を鷲掴みにされた葉一は瞬きも忘れて伊月に堂々と見惚れた。
「できる?」
「で……できません」
結局、イケメン高校生を甘やかしてしまう地味社会人なのだった。
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