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家族以外の誰かとドライブに出かけるのは初めて……そういうわけでもなかった。 二人目の彼女は姉の友達で年上であり、免許を持っていたので、たまにドライブに誘われることがあった。 「夕日と海、きれいだね」 ツートーンカラーの愛車を軽快に走らせる葉一を隣にして伊月は改めて窓の外に視線を向けた。 空いた海岸線。 ガードレールの向こうには茜色に煌めく海。 「うん。きれいだね、葉一くん」 前よりも色鮮やかに視界に写る景色。 微かに流れるラジオの曲が暖かい車内に溶けていく。 「葉一くん、おれ、夜景見たい」 マスクをしていた葉一におねだりすれば「うん、いいよ、丁度いいスポット知ってる」と速やかな回答が返ってきた。 海を眺めていた伊月の透明感溢れる横顔に、一瞬、過ぎった翳り。 そっか。 おれが前の彼女とドライブの経験があるみたいに葉一くんだって。 誰かをこの場所に乗せて同じ夕日を見たことがあるのかもしれない。 「……きもちわるい」 「えっっ。酔っちゃった?」 「……むかむかする」 「うわ、どこか適当なとこで停めようか、えーと」 葉一は一人焦り、伊月はシートに深く背中を沈めて気怠そうに目を瞑った。 初めて抱いたヤキモチを車酔いと勘違いした彼はやり場のない感情に秘かに胸を焦げつかせる……。 高台に整然と連なる住宅街の外れ。 夜八時過ぎ、背が高いフェンスにぐるりと囲まれた人気のない広場の駐車場脇に停められたツートーンカラーの車。 「前に誰かと同じ夜景見た?」 すでに車を降りて広場の端から燦然と光り瞬く街並みを眺め、先程から口数が極端に少ない高校生の体調を案じ、早めに切り上げて車に戻ってきてみれば。 シートベルトをする前に壁ドンならぬ、窓ドン、された。 びっくりしている葉一にさらに迫って、未だヤキモチを長引かせている伊月はマスクにほぼ半分隠されている顔を覗き込んだ。 「他の誰かともカレーうどん食べて、夕日見ながらドライブして、ここで夜景見た?」 伊月が何を聞きたいのか理解した葉一は……ぷいっと顔を背けた。 「葉一くん」 「伊月くん……おれ、もう二十六なんだけど……?」 「二十六歳でも童貞の人、いると思う」 「そりゃあ、いるだろうけど……ほら、遅くなるから帰らないと」 「はぐらかした」 「っ……そう言う伊月くんは?」 「……」 「か、かっこいいし……どう考えたってモテた……ううん、現在進行中でモテるよね……ていうか、あのさ、そろそろ退いてくれないかな……こんなことされるの慣れてないから、おれ……わっっ?」 すり、と頬擦りされてそっぽを向いていた葉一はどきっとした。 「二人。付き合ったことある」

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