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駐車場脇にポツンと設置された外灯以外に明かりは乏しく。 あっという間に冷えた車内に伊月の白い息がふわりと舞う。 「半年もしないでフラれた」 「えぇぇ……伊月くんがフラれたなんて……うそだ……」 「うそじゃないよ、葉一くん」 お互い羽織るアウターが擦れ合って暗がりに奏でられる衣擦れの音。 「おれが相手に興味持てなくて放置したから」 「そ、そうなんだ、ふぅん」 「そいうい性格なの。おれ。学校もネットもテレビも、周りのこと、あんまり興味ない」 「猫、猫は……? アイコン、友達の飼い猫だったよね?」 「あれはトモダチに勝手に設定されただけ」 でもね。 葉一くんを通してみたらいろいろ楽しくなってきた。 「おれを通して……?」 「葉一くんが、どのおにぎりにしようって迷ってるの見てたら、お腹空いて、葉一くんが選んだおにぎり、おれも同じの選んで、いっしょのもの食べてるんだなぁって思ったら、おいしくなった」 さっきのカレーうどんも。 夕方の景色だって。 「あ」 マスク上から僅かに覗いていた頬にちゅっとキスされて葉一はまっかになった。 なかなか離れようとしない伊月の胸に両手をあてがい、過度な密着を拒もうとした。 はむっっ 「わぁぁ……っ」 うっすら紅潮していた耳たぶをやんわり甘噛みされた。 はむ、はむ、はむ、はむ 「か、噛むのだめっ、耳噛むのだめっっ」 「お腹ならいいの」 「腹もだめっっ……ていうか……こんなところで……」 「車の中で、えっちしたこと。ないの」 「あるわけっ……」 耳たぶをはむはむされて涙目になっていた葉一は逸らしていた視線を伊月に傾けた。 「伊月くん……あるの……?」 ヤキモチやいてる葉一くん、かわいい。 「ないよ。誘われたけど。その気にならなくて」 はむっっっ 「ンぅ……っ」 「葉一くんとが、初めて」 「は、初めてって……しないからっ……車の中でとかしないよ……っ?」 「したい」 「だ、だめだって……っっいつ人が来るか……っっ」 「じゃあ人か来たらやめる」 「ちょっ……伊月くんってば……もぉ……!!」 実際、人が来ても即座にやめられるレベルじゃないところまで求めてしまった伊月。 「ぅぅぅ……っむり……こんなのむり……っ」 後部座席に窮屈そうに仰向けになった葉一に覆いかぶさって腰を波打たせる。 狭い車内でお互いアウターもそのままに下肢の服だけ乱して不埒な発熱を共有する。 紛れもない夜中のカーセックスに不謹慎に興じる。 「寒いのに熱い……」 狭まり合う内壁に露骨に火照った熱源がキュゥキュゥ締めつけられる。 抉じ開けた後孔が噛みつくようにキツク窄まる。 「葉一くんのココ……先週よりえっちになってる……」 依然としてマスクをつけている葉一は「なってなぃぃ」と涙ながらに懸命に否定した。 「ううん、なってる……おれの、ぎゅぅぎゅぅって、締めつけてくる……」 「それはぁっ……伊月くんのせぃっ……伊月くんのが、おれのなかで、どんどんかたくなるから……っ」 「ン……ごめんね……?」 ぐり、ぐり、ぐり、ぐり 「ふぅぅぅーーーー……っ……それ、やめ……っ」 膨らみきった先っぽで一番奥を小突かれて葉一は伊月のチェスターコートをぐっと掴んだ。 決して華奢じゃない平均的な体つき、よって窮屈でしかない後部座席で両足を開かされ、突き上げられて。 天井が低い車の中で。 人に見られて通報されようものならトンデモナイ事態になるというのに。 「葉一くんのココ、かわいくてえっちだね」 声を甘く上擦らせ、頬をほんのり上気させ、普段は麗しのサイボーグじみた端整フェイスが色っぽく歪む様にどうしようもなく興奮してしまう。 「かわいく、なぃ……っえっちじゃなぃ……っ」 ごり、ごり、ごり、ごり 「ああぁぁ……っっっ」 「……声、かわい……」 もっとちゃんと聞きたい。 葉一くんの顔、ちゃんと見たい。 ぐりぐり、ごりごり、葉一の一番奥を攻めながら伊月は彼のマスクに手を伸ばした。 溜め込まれていた吐息の熱気が解放される。 だらしなく満遍なく濡れた唇が、ぱくぱく、ぱくぱく、水中に上がった金魚みたいに開閉される。 「かわいい」 「っあ、だめ……風邪うつるっ……!」 「おれと葉一くんで、うつしあいっこ、しよ……?」 「こら、ぁ、伊月く……っ……っんむ……む……む……っ」 びちゃびちゃだった唇が伊月によってさらにどんどん濡れそぼっていく……。 「「ごほごほっ」」 「どっちもマスクしてるって、何かヤラシイね、葉一くん」 「……伊月くんのヤラシイの定義がよくわからないよ、おれ」

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