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「ひっ」 「あ。ごめん。強すぎた」 ……すり、すり、すり 「わぁ……っ伊月くん、そこはちょっと……っ」 服越しに股間に頬擦りしてきた伊月に葉一はどっと発汗した。 おっかなびっくり目をやれば上目遣いにすでにコチラを窺っていた彼と目が合う。 かぷ、とチノパン越しに甘噛みされた。 次に発熱した唇がその輪郭をやんわり辿っていく。 はむ、はむ、食んだり。 くん、くん、鼻を鳴らされたり。 「伊月くん……」 葉一は止められずに薄目がちに見ていた。 ゆっくり服を寛げて取り出された自分のペニスが風邪っぴきで熱もつ伊月の口内に招かれるのを。 「む、むりしないで」 先端の感触を舌の先で興味深そうに探っていた伊月は、喘ぎ出しそうになる口元を手の甲で塞いで微かに震えている葉一をチラリと見た。 かぷ、かぷ、ちゅっ、ちゅっ 「ぅ、ぅ、ぅ」 「葉一くんは。むりしてるの」 「ぅぅぅ?」 「こういうことされて。きもちわるいの。おれ、きもちわるい?」 「そんなわけ……」 ピクピクしているペニスに頬擦りし、根元をしごき出した伊月に、葉一はぎゅっと眉根を寄せた。 「きもちわるくない……きもちいい……」 柔らかな腹に戻ってきた唇。 優しく絡みついて熱源を頻りに上下する細長い五指。 「いってみて」 「あ、あ、でも……おれ……っ……ぅ、ぅ、ぅ……っ」 「おれの手でいってみて。もっときもちよくなって」 「ぅ~~~……っ……ぅぅぅぅ……っっっ」 伊月は釘付けになっていた。 一段と脈動したペニスから濃密な白濁を迸らせた瞬間、もどかしげに腰を反らして呻吟した葉一の顔に心臓の裏側をゾクリと波打たせた。 おにぎりを必死に選んでいる葉一も好きだったし。 別の客が棚から落として放置していった品をちゃんと戻した葉一も好きだったし。 カレーうどんをおいしそうに食べる葉一も好きだったし。 風邪っぴきの自分を気遣ってくれた、恥ずかしそうに感じていた、最も無防備な瞬間を見せてくれた葉一のこと、これから先に知る彼のことぜんぶ、もっと好きになりたくなって。 「かわいい」 我慢できなくて唇にとうとうキスした。 何回も甘噛みして、吸って、夢中になった……。 「風邪。うつっちゃうかな……」 「ぅぅっ、ぅぅっ……もう、いいよ……っおれにうつしてっ……」 「うつしていいの……葉一くん……」 マスクを顎下にずらして自分の真上で律動する伊月に葉一はコクコク頷いた。 自分自身の白濁を塗り込まれてとろとろにした後孔に夢中になって出入りしている熱源。 痛いし、おっかなかったが、かつてない魅力を惜し気もなく解放して発情している伊月に何もかも捧げたくなって。 「次はちゃんと……おすすめのカレーうどん、いっしょに食べよう……ね」 怖いくらいジンジンする。 伊月くんから風邪うつされてもいい、むしろうつされたい……。 まるで心臓まで伊月に甘噛みされた気がした。

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