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もっとトイレが好きになるプレイ ~4/4~
「工藤さんが俺にしたいことを、して欲しいです」
思考がまとまらないまま口をついて出た言葉に、工藤の目が見開かれる。その表情を見て初めて、雛木は自分が何を欲していたのかに気づいた。
俺が悦ぶことだけじゃなく、工藤さんがしたいプレイを、俺にぶつけて欲しい。
それは一見献身のようでいて、そうではないことを雛木は知っていた。
かつて乳首への初めてのパルス責めで悶え苦しんでいた時、工藤が盛り上がった股間を自ら摩っていたのを見て、信じられないほど欲情した。痛みを全て快感に変えられるほど、嬉しくて仕方が無かった。
そう、俺は、奴隷の俺をいたぶって興奮するマスターが見たいんだ。
「虐めてください。もっと。工藤さんの欲望を俺に教えて下さい」
プレイ中は饒舌な工藤の沈黙が、雛木に勇気を与えた。
「工藤さんの手で……滅茶苦茶にしてください」
瞬間、骨が砕けそうな力で顎を掴まれた。
「あなたは本当に……!後で泣いても知りませんよ 」
工藤の息が荒くなっていることがわかった。
嬉しい。嬉しい。
工藤はいてもたってもいられないというようにぐっと指でネクタイを緩めると、ふぅっと一息ついて、一房乱れた前髪を掻き上げた。
激情は一瞬でその表情から過ぎ去っていたが、目だけは尚も、爛々と強い欲望を湛えていた。
「好きなだけいきなさい。ただし、声を出すことは許しません」
壁に固定された雛木の右足と乳首を引っ張る麻紐の間に立った工藤は、おもむろに自らの右足をすっと持ち上げた。
こんな時だが、磨き抜かれた茶色い革靴が美しいと、雛木はぼうっと思った。嫌味に感じない絶妙なつま先の尖り具合が、大人の遊び心を感じさせる。初めてじっくり見たが、靴底はラグソール状の深めの凹凸があり、つま先よりもむしろ鋭利な印象を与えた。ヒールも高めで、硬質に見える。靴までもがこんなに支配者然として美しかったなんて気づかなかった。
そんなことを考えたのは、後から思えば一種の走馬灯のようなものだったのかもしれない。
工藤のその美しい靴に覆われた足が高く持ち上がり、雛木の股間目掛けてゆっくりと下ろされた。
硬質なヒールが、小さな下着からはみ出したペニスの先端を捉える。まさかと思う内に、ごりっとヒールで抉られた。
「つっ!!!ふぅぅぅぅっ―!」
涎を垂れ流していた口を今更ながら食い縛り、衝撃に耐える。ギザギザのソールが突き刺さる感触は針にも似ているが、それを面で押し付けられると、痛みと圧迫感が押し潰される恐怖を増大させた。
しかしその痛みと圧迫感と、何より便器に固定されて工藤にペニスを踏まれているという目の前の光景が、とんでもなく被虐の悦びを燃え上がらせる。もっと思い切り踏んで欲しいと思っていることに、雛木は自分で気づいてしまった。
「はぁっ はぁっ」
荒い息をついて痛みと喘ぎを体から逃がそうとするが、工藤は決して雛木に休む隙を与えず、ヒールから靴裏全体へと徐々に体重を乗せていった。ぐぐっと押し潰される面積が増え、ついにつま先が雛木の下腹部を捕らえた。そのまま力を籠め、ぐうっと押し込まれる。
「ううぅっ!ふう゛う゛ぅっ…!」
なけなしの力で耐えていた腹筋が工藤の靴底に負け、腹が大きく凹む。上体が後ろに倒れ、乳首が、信じられないほどぐぐぐぐぅっと引き伸ばされた。
――ちぎれちゃう、ちぎれちゃうっ。乳首、痛い…気持ちいい……ちぎれちゃうよぉっ。
悲鳴が引き結んだ口腔を荒れ狂った。下半身は膝裏とアヌスから伸びる麻縄で固定され、上半身はいまや、吊られた手首と乳首だけで支えられていた。もはや元の形を思い出せない程に胸の皮膚ごと引き伸ばされた乳首は、最初から体を拘束するためについていた突起だったようにさえ思えてくる。人間の皮膚が、こんなに敏感な場所が、こんな風に伸びるなんて。
「ひっ……ひっ……」
胸の痛みに息がうまくつけず、すすり泣くような声を漏らす雛木をよそに、工藤は乳首の付け根に触れてその伸び具合を確認していた。その最中も、奴隷の証として贈られたコックリングに搾り出されたペニスは、無情に靴底に踏み潰されている。
両の乳首を締め上げる無骨な二本の麻紐の間から見える、美しく光る工藤の革靴。その靴底を、雛木が漏らした先走りが濡らしていた。
「あぁ、ここまで伸びたら、もうあなたの乳首は元には戻りませんね。諦めて、一生私の奴隷でいなさい」
瞬間、工藤の右足に全体重が乗せられた。
もう限界だと思っていた乳首が更に引っ張られ、雛木の視界に赤い火が爆ぜた。もはや痛みか快感か判別できない熱は、工藤に与えて貰っている責めだということだけしかわからない。腹に食い込んだ工藤の靴のつま先が、アヌスを引っ張り続けていた鈎針の先端の球を萎えた腹筋越しにごりっと踏み潰す。空気が入って切なかった肉筒が、踏まれた圧迫に助けられて球を包み込み、歓喜に震えた。形が変わるほど強くヒールで踏み潰されたペニスは遂に、横に潰れた鈴口から大量の白濁液を噴き出した。
「う゛ああああ゛あ゛んっっっ!!!」
耐え切れずに潰れた悲鳴が迸る。
どこでいったのかさえわからなかった。麻縄が食い込む手首と膝裏も、シリコンで覆われた球が抉る腹の奥も、引っ張られて閉じられずにか細い空気の音を奏で続ける入口も、トイレのドアに信じられないほど引き伸ばされた乳首も、そして工藤の美しい革靴で踏み潰されたペニスも腹も、どこもかしこも痛くて苦しくて気持ちが良くて。
そして何より、奴隷を踏み潰すマスターのこめかみから一筋滴った汗が美しくて。
雛木はどうやって自分が絶頂に達したのかもわからないまま、一週間ぶりに吐き出した精液で工藤の美しい靴を汚した。
「あああぁっ…ああああぁっ…」
堪え続けた欲望が出口を求めて暴れ狂うように、縛られた体をびくんびくんと躍らせながら、びゅうびゅうと白濁を吹き上げ続ける。もういったのに、もっと絞り出せとでも言うかのように、工藤の革靴が体重をかけたまま前後に動き、ペニスと腹の中の球がごりごりと踏み潰され続ける。
中も外もどこもかしこも痛くて気持ちよくて身悶える。意識の隅で声を堪えなければと思うが、飛び出した舌は口腔内への戻り方を忘れたように突き出されたままで、迸る絶頂の声を押し留めてはくれない。
「いや゛あ゛ぁ゛っ、止まらなっ、工藤さんっ、工藤さっ、ぐっう゛う゛っ」
突然口に突っ込まれた四本の指に悲鳴を押し付け、必死で舌を絡めて吸い付く。その間も痙攣は止まらなくて、便器も麻縄もぎしぎしと軋みを上げ、乳首が繋がれたドアはガタガタと派手な音を立てた。工藤は指を雛木の口に含ませたまま、尚もごりごりとペニスと腹を踏みつけ続ける。
「静かにしなさいと言ったのに。躾け直しが必要ですね」
そう笑った工藤の目に浮かんでいるのは、紛れも無い欲情の炎。
――あぁ、工藤さんが俺をいたぶって興奮してくれてる……。もっと、もっと踏んで下さい……。
ようやく痙攣が収まり始め、指先一本動かせないほどぐったりと縄に体を預けながらも、雛木は酷く嬉しげな様子で口に突き入れられた工藤の指をしゃぶり続けた。
ふらつく度に腰を支えてくれる工藤と連れ立って、オフィスビルを後にし、あえて徒歩でホテルへ向かう。
解放された乳首は麻紐の形にぼこぼこと凹み、ちょうど小指の第一関節から指先まで程の長さになって痛々しく腫れていた。腫れが引けばある程度は縮むと言われたが、少なくとも今はシャツの下に綺麗に収まり切らずにひしゃげてしまい、早く解放されたくて悲鳴を上げている。
引っ張られて空洞を覚えさせられたアヌスは早く大きくて太い物をぶち込んで欲しいとやわやわと収縮を繰り返し、ペニスは初めて味わった工藤の靴底の感触に早くも焦がれていた。
トイレでのプレイは非常に濃かったものの、一週間の禁欲後では一度きりの射精で体が静まるはずがない。縄痕が残る疼く体をスーツの下に押し隠し、何食わぬ顔を装って踏み出す一歩一歩が、既にホテルでの次のプレイへの序章だった。
「トイレがもっと好きになれましたか?」
工藤の問いは一見世間話のようだったが、こんな街なかでさっきのあのいやらしいプレイについて話しているのだと思うと、答える雛木の顔は赤らんだ。
「好きになったどころか……。これからはもう便器を見ただけで縋り付いて腰を振ってしまいそうです」
半ば本気で熱い溜息交じりに答えた。
「便器に縋り付くなんて困った人ですね。あなたが縋り付いて腰を振るのは私の足だけにしておいてください」
真顔で言われ、心とアヌスがぎゅっとなった。
それは、今すぐしてみたい。
今後はトイレに行く度に今日のことを思い出して、乳首を引っ張りながら自慰することになってしまうだろう。そんな自分の姿を思い描くと、街なかだというのに欲情が更に高まってしまう。
「正直ですね」
ちらりと雛木のスラックスの股間を見た工藤がふふっと笑った。
「く、工藤さんも、トイレに行く時に俺のことを思い出してくれますか」
慌てて鞄を股間の前で持ち直し、照れ隠しで問い返すと、工藤はおやという表情をした。片眉を上げる仕草が洒脱で、悔しいくらいに素敵だ。
「確かに今日のあなたは殊の外可愛らしかったので、私もトイレに行く楽しみが増えましたが。そうでなくても、私はいつでもあなたをどんな風に虐めてあげられるだろうと考えていますよ。あなたがトイレが好きだと言っていたので、トイレでできる刺激的なプレイを何パターンも考えました。先ほど使ったビルも、いつか使えたらと思って前々から目星をつけていたんです。部外者が利用しても怪しまれず、清潔で、人の出入りが少なくて、吊りができる程度に壁が丈夫なオフィスビル風のトイレを足で探しました。気に入って貰えたなら嬉しいですね」
あっけにとられて言葉も出なかった。
確かに工藤は奴隷として可愛がってくれているとは思っていたが、自分が想うほどには工藤の想いは強くはないだろうと、根拠もなく思い込んでいた。会えない時間に雛木が工藤を想って心と体を切なく疼かせている間も、工藤は別の奴隷とプレイしているかもしれないと考えることもあった。それが、自分のためにプレイを考え、それにふさわしい場所を捜し歩いてくれていたなんて。
工藤の心の中に自分がいたことが嬉しくて、主人が奴隷のために支払ってくれた労力があまりにももったいなくて、じんわりと涙が込み上げてきた。
「ありがとうございます。俺、工藤さんの奴隷になれて、幸せです」
涙を隠すようにぱっと俯き、出会った頃からは想像もつかない程の素直な言葉を口に乗せる雛木の腰を、工藤がそっと引き寄せた。
「今日はあなたに驚かされてばかりですね。私も、あんなに心身ともに追い詰められた状態で、私のしたいことをして欲しいと言ってくれる奴隷を手に入れられて、とても幸せですよ。あまりにも愛しくて、あの時は一瞬我を忘れました」
耳元で囁かれる睦言はあまりにも甘くて、雛木は膝から崩れ落ちそうになる。嬉しすぎて、息苦しかった。
そんなに喜んでくれるなら、いくらでも言いたい。どんなプレイにも応えたい。もっと痛くても、他人に蔑まれるような体になっても構わない。
寄り添う工藤の体から立ち上る香水の香りを胸いっぱいに吸い込み、顔を上げた雛木の目は既に欲情にとろけていた。
「俺の体、工藤さんの好きなように使って下さい。早くホテル、行きましょう」
少し背伸びをして工藤の耳元に唇を寄せ、小声で強請った。あからさまな発情を見せる奴隷を、マスターが優しく窘める。
「人前でそんな顔をして。いけない人ですね。さっきすれ違った女性が興味津々といった様子であなたを見ていましたよ。あなたは既に人目を引くほど爛れた色香を振りまいていることを自覚するべきです。さぁ早く、上着と鞄を私に渡しなさい」
雛木は顔を赤くしながらも、いそいそと上着を脱ぎ、鞄と一緒に工藤に手渡した。工藤は代わりに自分のボストンバッグから伊達眼鏡と大判のマスクを出してくれたので、ありがたく受け取って身につける。
夜になっても真っ当な表情を崩さないオフィス街で、スラックスの股間とシャツの胸にあからさまな隆起を作る雛木は異邦人だった。シャツ越しに夜気に触れて、上着の重みでひしゃげていた乳首が再び芯を持ち、固く勃ち上がる。工藤に言われてインナーシャツは脱いだままワイシャツを着ていたので、まるで素肌の胸に二つブローチでもつけているかのように、長く大きくなった乳首が薄い生地をつんと突き上げていた。工藤に踏まれてひりひりと痛むペニスは、下着のジッパーを開けてぼろんと露出させていたので、直接スラックスを内側から押し上げている。
夜になって気温が下がった大手町では、シャツ一枚の雛木は些 か目立った。すれ違った中年の男性のにやにやとした好色な笑い、若い女性の嫌悪に歪む表情、カップルのひそひそ話。雛木は耐え難い羞恥に、震える足を何とか前に進める。
若い男性二人がすれ違いざまに「超変態じゃん」と嗤ったのが聞こえた。
――見られてる。どうしよう。乳首もあそこも勃起しまくってるの、知らない人にばれてる……!
泣きそうになりながらも、乳首もペニスもじんじんと熱くてたまらなかった。見てもらえないアヌスが、切なくさえあった。
「わかりましたか?あなたはもう、誰が見ても立派な変態なんです。大人しく私に可愛がられていなさい」
そう言って工藤が自分の上着を脱いで、抱きしめるようにばさりと雛木の肩にかけた。タイトなシルエットだから意識したことはなかったが、こうして羽織ってみるかなり大きい。香水と工藤のかすかな汗のにおいと、そしてじんわりとした体温が緊張し切った雛木の体を包み込んだ。くるまるように前を掻き合わせ、震えながらいやらしい体を隠す。
「さあ、行きますよ。私の好きにさせてくれるんでしょう?まずはホテルであなたの乳首をよく見せてください。形もしっかりと整えて、二度と人前で服を脱げないようないやらしい形にしていきましょうね」
差し出された手は、先程まで雛木がしゃぶりついていた右手だった。ごくりと喉が鳴り、はぁっ…と熱い息が漏れる。
人に見せるにはあまりにも恥ずかしい体は、雛木を工藤の奴隷たらしめる何よりの証拠だった。あんなに理性的な工藤が、たまらないというかのように、踏みつけて伸ばしてくれた乳首。
雛木は掻き合わせたジャケットの下で、ビンビンに勃ち上がってしまった乳首を愛しむように撫でてぴくりと肩を竦めると、酷く誇らしい気持ちで工藤の手を取って、その隣に並んだ。
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