27 / 36

雛木君がハマった、黒くて細長いアレ ~反省&実践編 4/6~

雛木の全身に、雷で打たれたかのような衝撃が走った。 今、工藤は何と言ったのだろうと思考が停止し、唇が戦慄(わなな)く。 愛情だと、そう言ったのだろうか。 奴隷を鞭打つのは、主人の愛情だと。 愛しているから、打つのだと。 雛木の頬を、涙が伝った。 懲罰の時でさえ、打たれる度に工藤の優しさや気遣いは十分に感じていた。だが、そこには愛すらあったと言うのだ。 自分の想いばかりに目が行って、工藤がどれほど想ってくれていたか気付けずにいた。 一打一打が愛の言葉だなどと、考えずに鞭を受けていた。 なんて、勿体無い。なんて、罪深い。 なんて、言葉にできないほど、ありがたいことだろうか。 背後に立つ工藤の表情は見えない。だが少し困ったような微笑を浮かべているのではないかと、雛木は思った。 「ですから、私にとって奴隷のセルフウィッピングなど言語道断なのです。といっても、それを理解させられなかったから、あなたがそんな罪を犯したのでしょうね」 私もまだまだですね、という悲しげな呟きが背後から聞こえて、雛木は必死で頭を横に振る。 自分が未熟で、考えなしだっただけだ。決して工藤のせいなどではない。 だが次の瞬間には、垣間見せた弱さや愛など忘れたかのように、工藤の声は主人としての威厳を取り戻していた。 「というわけで、奴隷の基本をあなたの体に叩き込みます。文字通りね。鞭は決して奴隷が勝手に使ってよいものではなく、主人から与えられるものだと理解できるまで。 そして、自分が奴隷だと自覚できるまで」 尻の狭間を鞭の先で切り裂くようになぞられて、雛木は縛られた体をびくりと揺らした。 条件反射でペニスにむくりと欲望が(きざ)す。 もっと、奴隷にしてもらえるのだ。今よりももっと。 愛を込めた鞭を、振るってもらえるのだ。 それは、甘苦しい懲罰の、始まりの合図だった。 工藤の鞭は、驚くほど優しかった。 シリコンの鞭先のしなりを最大限に活かし、弾くように皮膚の表面が打たれる。 痛みはほとんどない。パンッと軽い音がして、皮膚がじんっと熱くなる。 懲罰だと思い必死で堪えてはいるが、思わず「あんっ」と声を上げてしまいそうなほど、それは心地よく、性感ばかりを刺激する甘さだった。 しかも、麻縄が食い込む腕と腹は酷く痛むので、相対的に鞭がより甘美な刺激に感じられてしまうのだ。 背中から始まった打擲は、ゆっくりと時間をかけて、隈なく全身に及んだ。正確に、ほんの数センチずつずらして、肌が均一に赤くなるよう満遍なく打たれる。 雛木の皮膚はどこもかしこも熱をもち、皮を剥がれたかのように敏感になっていた。 鞭は顔にさえ及んだ。右の頬を打たれ、左の頬を打たれ、差し出すよう命じられた舌さえも打たれた。 だが、肝心な場所――こりこりに固くなった乳首、打たれるたびに嬉しげに揺れる勃ち上がったペニス、そして無数の青痣が残る尻――だけは、一度も打ってもらえていなかった。 そんな焦らし、全身を舐め回すかのような打擲が、背中のスタート地点に既に三度も戻ってきている。 四周目が始まったところで、雛木からついに泣きが入った。 「工藤さんっ……もう……もう……」 全身が燃え立つように熱い。工藤のジャケットの裾が翻る僅かな空気の動きでさえ、舌を這わされるような刺激と受け取ってしまう。 放置された乳首を、ペニスを、尻を、打って欲しい。思い切り強く、打って欲しい。 痛みと呼べない程のソフトな鞭打ちが、これほどのもどかしい快感と苦痛をもたらすなど、雛木は考えたこともなかった。欲しくて欲しくて狂いそうだった。 「頃合ですかね」 工藤は聞かせるともなく呟くと、ようやくジャケットを脱いだ。 そしてバッグから細い麻縄を取り出すと、手早く雛木の性器の根元を強く縛った。コックリングに重ねるように玉も一緒に縛られ、竿の根元もぐるぐると巻かれて圧迫されている。 痛みはもちろん大きいが、かなり強く縛られているせいで、先端が痺れる感覚もあった。 「壊死しないよう注意しておきますから、あなたは安心して鞭だけに集中してください」 そう言った工藤が再び鞭を手に、雛木に向き直る。 性器の根元を戒めたということは、射精を封じなければいけないほどの刺激をもらえるということだ。 ようやく強く打ってもらえるのだと思うと、痛みへの恐れよりも安堵感が勝った。 だが工藤は、燃え立つように疼く雛木の胸元に、そっと鞭先を乗せた。 乳首のほんの僅か横、乳輪までほんの数ミリの位置だ。 「うぅっ」 疼きが突きぬけ、思わず呻く。もう少し、もう少し横、あとほんの少しなのに。 工藤は鞭先を縦にしたり横にしたりして、線と面で雛木の左右の胸を辿った。 乳首は乳輪がなくなってしまうほど限界までこりこりに固く勃ち上がっているのに、決して触れてもらえない。 もどかしくてもどかしくて、雛木の口からは堪えきれない呻きが漏れ続ける。 吊られた不自由な腰をうねうねと前後に動かし、やり場のない疼きに悶えた。 「これまでの数々のプレイに比べれば大した刺激ではないでしょう?それなのに、あなたは電車の中でそんな風に腰を揺らすのですか?」 意地悪な声音に思わずはっと目を見開く。 工藤の後ろに、山手線の座席が見えた。 車窓には、新宿の高層ビルが見える。 もちろんここはホテルだ。そんなことはわかっている。だが雛木の顔には、打たれただけではない赤みがかっと差した。 もしここが本当に電車の中だったら。 そんな風に想像したら、もうだめだった。羞恥がどっと込み上げる。本物の電車の中で工藤にいたぶられている光景が目に浮かんでしまう。 山手線の中でこんな風に全裸で吊られたら。 貸切なのはこの車両だけで、隣りの車両からは乗客達がにやにやと、そして貶める視線で雛木を覗き込んでいたら。 妄想は広がり、羞恥は欲望を否応なしに昂らせる。 その時、ほんの僅か、鞭先が雛木の右の乳首を掠った。 触れるか触れないかの微かな刺激だったにも関わらず、雛木は「ああっ」と感極まったような嬌声を上げた。 たまらなく、気持ちが良かった。 だが一瞬で快感は疼きに負ける。それどころか、一度快感を得たせいで、もどかしさが更に強くなった。 耐えきれず、堰を切ったかのように懇願が溢れた。 「ああっ、もう駄目ですっ、もう駄目っ!乳首っ、乳首がっ」 反対側の乳首もほんの僅か掠られて、声を上げて体をびくびくと揺らす。 気持ちよくて、恥ずかしくて、もどかしくて、死にそうだった。 「電車内で吊られる想像でもしましたか。そんな変態が通勤電車に乗るなど、世間様の迷惑ですね」 工藤の声はまるで軽蔑したかのように冷たいのに、鞭先は休むことなく雛木の乳首の周りを辿る。 一度触れられた乳首は更に刺激を期待して、痛いほどに尖っている。 乳首から股間へ、そしてアヌスへと、ぞわぞわとしたもどかしさが這い回り、息も出来ないほどだった。 疼いて疼いて、気が狂いそうだ。 吊られた腰をくねらせながら 「ああっ ああん ああぁー」 とひっきりなしに声を上げた。 もどかしくてもどかしくて。ひたすら疼いてもどかしくて。 雛木は喘ぎながら苦しさに涙を零した。 「もうっ もうっ 赦してくださいぃっ」 既に自分の罪が何だったのかも思い出せないまま、この苦しみから解放されたい一心で赦しを乞うた。 どうすれば解放されるのかも、もはや考えられない。ただその解放を与えてくれるのは工藤だと、それだけはわかっていた。 「では、奴隷に相応しい作法を教えて差し上げましょう」 すっと鞭を引いた工藤はくいと顎を引き、ひどく高慢な微笑を浮かべた。 雛木は身を掻き毟りたいほどのもどかしさに、 「お願いしますっ 教えてくださいっ お願いしますっ」 と涙ながらに訴えた。 そんな雛木の涙は工藤の鞭先でつっと拭われ、口元へと運ばれた。 その鞭先は苦しみの涙を、まるで蜂蜜のように雛木の唇に塗りこめる。 そんな刺激にすら唇が震え、 「あぁ……あぁ……」 と溜息のような喘ぎが漏れた。 「この口で」 鞭先で雛木の唇を辿りながら、工藤はゆっくりと口にする。 「どうか乳首を打って下さい、と心を込めて私におねだりするのです。打ってもらえるまで、何度でも。 そして打ってもらえたら、ありがとうございますとお礼を言うのですよ。それが望んで鞭打たれる奴隷の作法です」 ひゅっと、雛木の喉が鳴った。 解放を願って縋る必死さを湛えていた瞳に紗がかかり、とろんと光が弛む。 それは工藤がよく知る、服従を悦ぶ奴隷の瞳だった。 「ど……どうか……」 雛木の声は、欲望に掠れていた。 自ら打たれたいと鞭を望むのは、射精を請うより遥かにプライドが傷つく屈辱的なことだ。 何しろ、肉体の自然な欲求ではない。しかも、それが乳首ともなれば尚更だった。 だが工藤が見込んだとおり、雛木は顔を紅潮させ、濡れた瞳で自らそれを口にしたのだった。 「どうか、乳首を……打って下さい」 自分の発した声にさえ羞恥を煽られたかのように、雛木はぎゅっと眉根を寄せた。 「もう一度」 鞭先で雛木の唇を擽ると、追いかけるようにして舌が伸びた。 手足を縛られ、唯一自由になる舌で、一生懸命鞭を求めているのだ。 まるで雛鳥のように一心に。 「どうか、乳首を打って下さい。お願いします……」 切なげな顔が可愛くて、工藤は鞭先で舌に触れてやった。 すると雛木は熱心に鞭先を舐めた。主人の体の一部だと教えた鞭を、奉仕するかのように舐っている。 その素直さは、非常に工藤の好みだった。 「ほら、これが欲しいんでしょう?もっと心を込めてねだってごらんなさい」 雛木の気持ちは十分伝わってはいるが、もっと追い込んでやりたくて要求を続ける。 雛木はむずがるように縛られた体を揺らして、 「あぁ、打って下さい。これで乳首を打って下さいっ」 と懇願した。 「ほら、もっと」 そう言いながら唾液で濡れた鞭先で、ほんの僅かにつんと乳首を突いてやる。 すると、雛木が一気に崩れた。 「あああっ!お願いしますっ!お願いしますっ!打って下さい!乳首打ってくださいぃ!」 十字架にかけられたかのように開かれた胸を更に突き出し、身も世もなく工藤の鞭を求めてくる。 工藤の背をゾクゾクゾクッと凶暴な悦びが駆け上がった。 「よくできましたね」 一発でとどめを刺すつもりで、グリップに神経を集中させる。 当てる位置も、音も、強さも、全てが完璧になるよう心を込めて、鞭を振り下ろした。 狂おしいほど鞭を待ち侘びている、可愛い奴隷の勃ち上がった乳首に向かって。 《パァーンッ!》 心地良い打擲音が、室内に響いた。 固く勃った乳首を余さず捕らえた手応えが、握り込んだグリップ越しに感じられた。 「ああああああっ!!!」 雛木が絶叫してのけぞった。 空中で四肢を突っ張らせ、背を逸らして、ぶるぶると震えている。 きつく縛った性器は張り詰めてはいるが、精液は吹き零れていない。 天井を仰いだ口は何かに驚いたかのように叫びの形で固まり、腰だけがカクンカクンと不規則に前後した。 それは、長いオーガズムだった。雛木は初めて、鞭だけで絶頂を得たのだ。 その体から力が抜ける直前を見計らい、先ほどとは反対側の乳首も音高く打ち据える。 「あああっ!!!」 引きかけた絶頂の波に再び引き込まれ、雛木が叫んだ。 オーガズムを長引かせるよう、左右の乳首をパンパンパンッと立て続けに打ち据える。 「いやあああっ!!!ああああっ!!!!」 雛木は絶叫し、吊られた体を捩り、縛られた足をばたつかせている。 傍目にはまるで痛みを訴えているように映るだろうが、そんなはずはない。 その証拠に、雛木は悲鳴の間に 「だめぇ!!いくぅ!!いくぅ!!」 と叫んで頭をぶんぶんと打ち振るっていた。 「打ってもらったら何と言うんでしたか?ほら!」 パァン!と更に乳首を打ち、尾を引く絶頂に痙攣し続けている雛木を尚も追い込む。 「ひいいぃっ!」 悲鳴を上げた雛木は、はくはくと浅い息をつきながら、 「ありがとう……ございます……」 と搾り出した。 だが、当然そんなものでは赦さず、 「聞こえませんね」 と更に打ち据える。 すると雛木は、半ば赦しを乞うように、 「あぁっ!ありがとうございますっ!」 と叫んだ。 「ほら、打って欲しかったんでしょう?嬉しいんでしょう?」 乳首だけでなく、胸全体を痣にならないギリギリの強さで左右交互に打ち続ける。 可哀想で可愛い雛木は、痛みと絶頂感に身悶えしながら、 「ありがとうございますっ!ああっ!ありがとうございますぅっ!」 と咽び泣いた。 《続》

ともだちにシェアしよう!