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《読者様リクエスト企画 『雛木と誠吾、尿道責められるってよ』2》

かくして二匹の奴隷は、それぞれの主人に尿道を開発されることになったのだった。 雛木には工藤の名を他人に漏らした罰、誠吾にはいつまで経っても中イキできず主人を煩わせている罰、という名目があるものの、二人ともなぜ急にこんなことになったのかと気持ちが追い付いていない。 いや、これから人前で尿道を弄られるのだという事実を受け入れたくなくて、半ば意思のないような戸惑った表情を浮かべて機械的に動く。 膀胱を空にして股間をしっかりと洗ってきなさいという工藤の命令にのろのろと従い、シャワーから出た時には、もう二人の私服はそこにはなく、代わりに清潔そうな薄水色の検査着が置かれていた。 レイの店は酒の品揃えは悪いのに、こういうところは気が利きすぎる。 雛木と誠吾は用意されたギリギリ股間を覆う丈の検査着に袖を通し、レイに秘密の部屋へと連行されたのだった。 一体この秘密の部屋は何種類あるのだろう。定期的に内装をガラリと変えているのか、何度も訪れている雛木にも未知の部屋がいくつもある。 中でも今二人が連れて来られたのは、コメントし辛い程に高度にイメージプレイに特化した部屋だった。 何しろ、見るからに病院の診察室だったのだ。 ドクター用の机の上には、滅菌されたと思しきさまざまな個包装の道具が並べられている。もちろん、レイが用意した備品だ。 その店主レイは検査着に身を包んだ奴隷二匹を主人たちに引き渡すと、他の客が来店したからと残念そうにバースペースへと戻って行った。 雛木と誠吾は今、震えながら診察台の前に立ち尽くしていた。人一人が寝られる程度の大きさの診察台は、ステンレスの表面が鈍く光を反射し、ひんやりとした冷気をむき出しの二人の太股の裏に伝えている。 事前に工藤からいくつもの問診めいた質問――腎臓や膀胱に関わる病歴、排泄の頻度、排泄時の痛みや不快感の有無等、完全に泌尿器科の様相を呈していた――を受けていたため、余計に病院に来ているような気分になっている。 尿道プレイが初めての誠吾はもちろん、雛木もペニスの中ほどまでしか入れてもらった経験がないため、前立腺を刺激するほど深くまで異物を入れられるとなれば恐ろしい。 ましてや、二人とも他人の目の前でのプレイは初めてだ。いざその場になると脅えてしまうのは道理だった。 無意識に寄り添った奴隷二人を唯一守ってくれる薄水色の検査着は、スナップを三つ外せば完全に体の前面が露出される作りで、酷く頼りない。いわゆるお医者さんごっこ用の部屋であり衣装なのだろうが、リアリティが過ぎる。 二人は剥き出しになった足を恥ずかしそうに内股にし、検査着の裾を下に引っ張りながら、主人の言葉を待っていた。 「二人とも、診察台に腰掛け、足を大きく開きなさい」 工藤の静かな声に、雛木も誠吾もびくりと肩を揺らす。淡々と、しかし厳かに、恥辱の時間が始まったのだ。 雛木も誠吾も自分の主人には散々痴態を見せている。しかし、互いの視線を意識すると恥ずかしさは禁じ得ない。 何より、二人の主人の格好がより羞恥を煽っているのだ。工藤はスーツのジャケットを、矢上は革のライダースジャケットを脱ぎ、レイが用意した白衣に袖を通していた。 プレイの内容が内容だけに、高価そうなスーツや革ジャンを汚すリスクを考えれば白衣は理に適っている。清潔で、汚れが目立つために異常を発見しやすく、洗いやすい。 だがしかし、あまりにもプレイ然としすぎていて恥ずかしいではないか。 工藤も矢上も白衣に対して何ら気恥ずかしさを見せないせいで、雛木と誠吾はかえって恥ずかしく、且つ、改めて自分のご主人様の格好良さを再確認してしまうのだった。 ともあれ、さすがに己の主人に命じられた雛木の方が先に行動に移った。 太股の高さの診察台に腰を下ろし、足を持ち上げ足裏を診察台につけると、意を決したように工藤に向けて膝頭を大きく開く。羞恥から視線は逸らされ気味ではあったが、見てもらいやすいように両手を後ろについて、顎を軽く引いている。 晒された無毛の股間には、工藤のイニシャルが刻まれたコックリングが鈍く光っていた。 「誠吾、俺に恥をかかせるな」 矢上の低い声に、誠吾の喉がひゅっと鳴ったのが聞こえた。カタカタと震えながら雛木の隣に腰を下ろすと、遠慮がちに足を持ち上げて開く。 染められた茶色の細い眉毛はきゅっと寄り、目つきが悪いと言われがちな小さな黒目がきょどきょどと動き、過ぎた不安を訴えている。雛木の膝と自身の膝が触れると、びくりと全身を揺らし、小さく「うぅ……」と堪えきれない呻きを漏らした。 部屋の特性上、酷く明るく清潔感のある照明に照らし出された二人の股間は、緊張のあまり縮こまっている。持ち物のサイズは似たり寄ったりのようだが、誠吾は剃毛されていない分根元が繁みに埋まっており、コックリングでくびり出された雛木より幾分小さく見えた。 他人に無毛の状態を見られるのはもちろん、工藤に贈られたコックリングを見られるのも初めてで、雛木の内腿には緊張のあまりざっと鳥肌が立っている。 だが、自分より脅えている人間を見ると不思議と恐怖心が薄らぐもので、可哀想なほどに脅え、もはや半べそをかいている誠吾を隣に意識すると、雛木の不安は不思議と薄らいでくるのだった。 「本来は何日かかけて少しずつ奥まで入れられるように慣らしていくのが理想ですが、そこまで付き合う気はありませんので、多少無理にでも前立腺への到達を目指しましょう。 まずは、尿道を広げるためにステンレス製のブジーを使います。ある程度の硬度があった方が、受け入れる側の痛みが少ないです。間違っても綿棒など入れないように。吸水性のあるものは怪我のもとですから」 工藤が手に取ったのは、先端が丸くなったまっすぐなステンレスの棒だった。 尿道を押し広げる道具をブジーと呼ぶらしい。太さは5ミリ程度で、長さは20センチ程度だろうか。抜けなくならないようにだろう、背の部分には直径3センチ程度の環がついている。 こんなに長く硬いものを、一番敏感な場所に差し込もうというのだ。 薄手のゴム手袋に包まれた工藤の指が、雛木のペニスをそっとつまむ。決して勃てるなと命じられてはいたが、薄いゴム越しに工藤の指先の熱が感じられるのはとてもまずい。 雛木は感じるまいとぎゅっと目をつぶり、意識をよそへ逃そうとする。 だが、耳元に聞こえてくる誠吾の不安げな声が、意識の逃避を許さなかった。 「彰浩(あきひろ)さんっ、俺こんなの嫌っす!……怖い、よぉっ」 隣同士触れ合った膝頭越しに、誠吾の震えが伝わる。 誠吾の訴えは耳を塞ぎたくなるほど哀れっぽく可哀想で、雛木はいてもたってもいられず、左手で誠吾の震える右手を掴んだ。誠吾も縋るように握り返してくる。 奴隷たちが手を取り合う様子を前に、淡々としていた二人の主人がふっと表情を和らげた。 「かわいいじゃねぇか」 「ええ、とても」 だが、可愛いからといって容赦はされない。むしろ嬉々としてプレイは進行される。 「尿道はペニスの中心ではなく、やや下側に通っています。ですから中心を貫くというよりは、裏筋に添わせるイメージで挿し込んでください」 本当に医者の研修ででもあるかのように、工藤が端的に説明し、雛木の先端の切れ目を押し開いてみせる。 赤みを帯びた柔らかい肉が空気に触れ、雛木はひくっと喉を鳴らした。そんな場所でも工藤に見てもらえるのならば悦びを感じられるが、矢上が覗き込んでいるとなればそうはいかない。 雛木は白い太股の内側を羞恥に染め、他人の視線という責め苦に耐えた。 だが、他人の奴隷の羞恥になど頓着せず、覗き込んだ矢上は「なるほど」と呟いている。 そして自分でも誠吾のペニスをつまみ、左手の親指と人差し指で先端を押し開いた。 「尿道はカーブしているので、真っ直ぐに入れようとしすぎないでください。壁に当たったら無理に押さず、柔軟に、先端で通路を探るような感覚で進めていきます」 工藤は迷いなく、直径5ミリ程度のステンレスの棒を雛木のペニスの先端に差し込んだ。 入口の裂け目から比べると太すぎるように見えるステンレスの棒は、クリーム状の潤滑剤をまとわせたおかげか、意外にも大した抵抗もなくするすると飲み込まれていく。 敏感な入り口の部分を冷たいステンレスが擦る感触は気持ちがいいが、普段は液体しか通らない管を固い棒が押し広げながら逆流してくる感触は、痛みとも圧迫感とも快感ともつかない。 とにかく、心と体に余裕がない。ハァハァと荒い息が口をつく。入れてはいけない場所に異物が入っていく光景は、痛々しくも酷く背徳感があって胸がざわざわとする。 それでもまだペニスの半ばまでは経験のある感覚だったが、そこを過ぎれば未知の領域だ。ゆっくりと串刺しにされていくに従い、恐怖心が加速度的に増していく。 だが、雛木は矢上の目を意識して、漏れそうになる声を堪えきった。工藤の奴隷なのにこの程度のことにも耐えられないのかとは思われたくない。 それに、自分が怖がることで誠吾に恐怖心を植えつけたくもなかった。 「この辺りで大体根元ですね」 尿道を進んでいたステンレス棒の先端が、遂にコックリングで絞られた位置にまで到達した。ペニスの先端から根元まで、全体が内側から押し開かれ続けている異物感がすさまじい。 だが、恐れていたほどの痛みはなかった。これなら耐えられそうだと安心した途端、ブジーがゆっくりと引き抜かれ始めた。 「ああっ、あっ、あっ」 思わず声が漏れてしまう。 入れられる時は押し広げられて犯されていく感覚があったが、抜かれる時は排泄に似たむずむずとした快感があった。 凹凸のない滑らかな金属棒は、するすると抜け出てすぐに全て引き抜かれてしまう。 もう終わりなのだろうか、と、雛木の心に物足りなさがよぎる。 だが工藤はすぐに、美しく揃えた指先で別の道具を示した。 「次はこのシリコン製のブジーを使います。ペニスの根本より奥はカーブしていますので、先ほどの真っ直ぐなブジーでは到達し辛い。これならば、うまく前立腺までたどり着ける可能性があります。 ただし、柔らかいと痛みを感じやすいという難点があります。先ほどのブジーで広げたところまでは入ると思いますが、それより奥まで入れられるかどうかは個人差がありますので、予めご承知おきください」 言うなり工藤は雛木のペニスをつまみ、その柔らかいブジーをぐいぐいと押し込み始めた。 一度広げられた尿道は柔軟性を見せ、先ほどより柔らかい素材を特に抵抗もなく飲み込んでいく。 ペニスに異物がどんどん押し込まれていく様は、背徳感という言葉以外の何物でも表現できない。しかも、その様子を他人にじっくり観察されているのだ。 挿入が二度目となると多少恐怖心は薄らぎ、代わりに矢上と誠吾の視線が改めて意識された。 羞恥にペニスがドクンと脈打ち、ぴくりと跳ねたのが自分でもわかった。掴んでいた指先でそれを感じたのだろう工藤は、叱るようにぐっと押し潰す。 内側に通ったシリコンの芯に敏感な肉が押し付けられて、じゅわんとした痛みが広がった。 たまらず息を詰めるが、雛木にとってそんな罰は逆効果だ。 挿入し辛いし痛みを感じやすいから勃起させるなと命じられていたにも関わらず、雛木はブジーが通った肉塊をみるみる硬くしてしまっていた。 それを感じた工藤が、先ほどのステンレス製のブジーの先端と同じくらいの位置まで入ったところで、挿入をやめてしまう。 「……躾がなっていなくてお恥ずかしい限りです。勃起していると入れづらいので、しばらく待ちましょう。 矢上さん、まずは真っ直ぐな方のブジーで誠吾君の尿道を広げてあげてください」 工藤に恥ずかしいと言わせたことに死にたいくらいに申し訳なさを感じながらも、工藤の所有物として、躾について謝罪される存在であることが嬉しかった。 申し訳なくて恥ずかしくて嬉しくて、あっという間に完全に勃たせてしまう。 敏感な肉がぎちっとブジーを食み、痛みに似た快感が突き抜けて、雛木は悩ましげに「はふっ……んっ」と吐息を漏らした。 これは、結構、イイかもしれない。 だがそんな雛木の悦びなど理解できるはずもなく、誠吾は串刺しにされながらも勃起しているペニスを見て驚愕に目を見開き、いやいやをするように首を大きく横に振った。 「動くなよ。動いたらちんこ裂けるかもしれんぞ。大丈夫だ、きっと気持ちよくなる。俺は絶対にやりたくないけどな」 矢上がかえって恐怖を掻き立てる言葉で誠吾を宥め、こんな感じか?と軽く首を傾げながら、雛木と同じ太さのステンレス製ブジーを差し込んでいった。 「やだやだっ。怖いっす、怖いぃ……」 誠吾にとっては初めての経験だった。無骨な矢上の指がおそるおそるといった様子で棒を差し込んでいく。 矢上の手にあると酷く細く見える棒だったが、誠吾のモノと比較するとかなり質量があった。 「あぁー、あぁぁー」 痛むわけではないのだろうが、快感にも程遠いようで、誠吾はこらえ切れないように間延びした悲鳴を上げている。 「中に抵抗を感じたら無理せずに止まってください」 工藤の指示が下る中、矢上の手で少しずつ押し込まれている。 雛木はぶるぶると全身を震わせる誠吾の右手を、ぎゅっと握りこんで励ました。 「おぉ、案外入るもんだな。根元までいけたぞ」 裏筋に沿って進んだ棒の先端が、繁みに埋もれるところまで到達した。 誠吾はひんひんと小さな鳴き声を上げながら、涙をほろほろ零している。 ペニスにはステンレスの芯が通り真っ直ぐになってはいるが、勃起には程遠い。 その様子を見て可哀想に思いながらも、雛木はほの暗い興奮を抑えきれずにいた。 奴隷が主人に好き勝手に弄られているところを、初めて客観的に見たのだ。 泣きながらも主人のされるがままになっている奴隷は、とても無力でいたいけで可哀想で可愛らしくて、そして卑猥だった。 ほんの少しだけ、奴隷を愛でる主人の気持ちが理解できると同時に、自分もこんな風に見えているのかと思うと興奮を抑えられない。 雛木は勃起を萎えさせるために放置されているというのに、ますます欲情を増して、自ら擦らないように我慢するので精一杯だった。 そんな様子を見て、工藤が呆れたように嘆息する。 「どうやら、待っていても時間の無駄になりそうです。叱りたいところですが、叱るとかえって悦んでしまいそうなので、もうこのまま前立腺を目指すことにします」 工藤の冷静な声音で語られた自らのみっともなさに、雛木はぐぅっとこみ上げる息と声を飲み込んだ。 工藤に叱られると悦んでしまう自分の変態さ加減を把握されていることも、そんな変態なのに責めてもらえることも、恥ずかしくて嬉しい。 工藤の左手が雛木のペニスに添えられ、弾力のあるブジーがそろそろと送り込まれていく。 腹側に向かって先端がせり上がってくるのが感覚でわかった。隘路を深く抉り進むブジーの感触に、ハーッハァーッと大きな息が漏れ、言葉を無くす。 痛みは確かにある。だがそれ以上に、意識したこともないような深い場所まで異物を挿し込まれているという混乱と背徳感の方が大きかった。 雛木にはもう、矢上の視線を意識する余裕がなくなっていた。 《続》

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