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《読者様リクエスト企画 『雛木と誠吾、尿道責められるってよ』3》

ステンレス製のブジーを根元まで入れられたままの誠吾は、更に深くまで責められている雛木の様子を見て、恐怖のあまり「ひっ……」と小さくか細い悲鳴を上げた。雛木と握り合った手がぶるぶると震えている。 僅かに残った気遣いで、雛木は大丈夫だと力強く握り返した。だが雛木も、ブジーの先端が陰嚢の裏辺りに達したところで、両足をがくがくと震わせ始める。 「あっ!そこ駄目ですっ!あっ、あっ、ひぃっ、ひっ……っ!あっ、あっ、あっ、あっ!」 射精感と、アヌスを抉られた時の切迫感と、小便を堪えている時の限界感が入り混じる。そこは絶対に直接刺激してはならない場所だと、本能が叫んでいる。 だが、たまらなく気持ちがいい……気がする。自分の感覚に頭が追いつかない。頭の中は「駄目駄目駄目駄目」と拒否の言葉で埋め尽くされているのに、雛木の口からは快感の喘ぎとしか聞こえない切羽詰まった声ばかりが漏れる。 それは、完全に未知の感覚だった。何かが引き出されようとしているのに、排泄するような忌避感があって解放しきれない。ひどくもどかしくて、恥ずかしくて、ぎりぎりで、でもこの追い詰められた先端をずっと味わっていたい感じ。これが尿道からの前立腺責めだというなら、これまで自分が無意識に抱いていた尿道という器官への認識が覆されてしまう。 尿道はもう、排泄や射精の単純で清々しい快感を得る出口ではいられない。侵入に対してひどく脆い、特別に恥ずかしい弱点だとしか思えない。だってこんなに、気持ちいいのか苦しいのかよくわからない、ギリギリに追い込まれてしまって、声が止まらないのだ。 こんなのありえない。なのに、こんなに混乱して身悶えているというのに、アヌスの感じる部分の丁度裏側が、工藤の操るブジーの先端で容赦なくこんこんっとつつかれてしまった。 「ひぃっ!いやああぁっ!ああっ!ああっ!あああーっ!」 悲鳴を上げ、誠吾の右手を強く握り締めたまま両足をガクガクと痙攣させる。 「せんぱい……?」 不安げな誠吾の涙声に返事ができない。挿し込まれたブジーの背をとんとんっと指先で軽く叩かれる度に、快感を生み出す中心を直接つつかれたような衝撃が走る。 気持ちいいと思う余裕もない。剥き出しの『気持ちいい』を直接つつかれているようだった。 雛木は悲鳴を上げながらびくびくと震え、高いところに縫い留められてぴりぴりと電流を流され続けるかのような、開放感のない絶頂の連続にのたうった。 「イキっ放しだな。さすが、よく仕込んでるじゃねぇか。それに比べて、見ろ、こいつのビビり具合はよぉ」 矢上の呆れた声音に、雛木が白目を剥きそうな眼球を無理に動かして焦点を合わせてみれば、誠吾は真っ青な顔でブジーに串刺しにされた己の股間を見つめ、全身を恐怖に震わせていた。いつの間にか、ステンレス製のブジーから、雛木が使われているのと同じ柔軟性のあるブジーに替えられていたらしい。 怖がる必要はないのに。委ねればこんな風に追い込んでもらえるのにと、雛木はふわふわした心地で誠吾の手をきゅっと握る。 だが雛木の手は実際には力加減ができず、縋るような強さで、誠吾の手の甲に爪を食いこませながら痙攣していた。その尋常でない様子に、誠吾の恐慌は更に高まってしまう。 しかし、誠吾の脅えを前にしても、新たな快感を植え付けようという矢上の欲望は止まらない。 ペニスの根本より奥はカーブを通すのが難しいのか、矢上は眉間に皺を寄せながらブジーを押し込んでいく。ほんの少しずつではあるが、入りつつあるらしい。 だが、ある一点に達した時、唐突に誠吾の限界が訪れた。 「無理っす!無理っすぅっ!やめて!ごめんなさい!ごめんなさいぃぃっ!」 ぶわっと両目に涙を吹き上がらせ、誠吾が本気の拒絶を見せる。 「あ?」 不機嫌そうな声を発しつつも、押し込むブジーを止めてやった矢上に対し、誠吾は涙ながらに訴えた。 「ごめ、っ、なさっ、っ、漏れる、漏れちゃう……。さっき、しょんべん、出なくって……。今マジで、漏れそう……っす……!」 よく見れば、確かに誠吾の下腹はわずかに盛り上がりを見せていた。工藤に膀胱を空にするよう言われていたのにも関わらず、どうやら緊張や恐怖でうまく出せなかったらしい。前立腺付近の膀胱括約筋を刺激され、我慢ができなくなったようだ。 雛木とて、これからされるだろうことを思えば緊張で自然な排泄などできなかった。だが、排泄と絶頂は紙一重どころか同心円状にあることを、雛木は嫌というほど思い知っている。尿道から奥を責められ気持ちよくなったとしたら、自分は漏らしてしまうに決まっている。だから、矢上と誠吾の前で粗相をしないよう、雛木は腹を圧迫して無理にでも絞り出したのだった。 だが、誠吾にはそんな認識も覚悟もなかったらしい。尿道を広げられ、膀胱のすぐそばを刺激されて、どうしようもないほどに尿意がこみ上げてしまったようだった。 「きちんと出してきなさいと言ったでしょう」 呆れた工藤の声に、 「こういう場で漏らしたがる変態だったとは知らなかったなぁ。お前のこと、わかってやれなくて悪かったなぁ。あぁ?」 と矢上の嫌味が続く。 誠吾はひんひんと泣き、ずるずると鼻水を垂らしている。やんちゃ坊主のような誠吾が、ペニスを虐められた挙句、小便を堪えて泣いている様は可哀想だった。 元々ノンケでSM趣味もない誠吾にとって、この状況には恐怖しかないのだろう。矢上のことが好きだから我慢しているに過ぎない。主人に調教してもらう悦びを感じられないのは惜しいことだと思うが、被虐趣味がない誠吾は健気で可哀想だった。 そんな思いがあったから、雛木はもしかしたら、無意識に多少非難がましい視線を主人たちに送ってしまっていたかもしれない。少なくとも、ブジーを奥まで差し込まれたままで放置され、もどかしい気持ちは間違いなくあった。 何しろ、雛木は串刺しにされたペニスを扱き立てて楽になりたい欲求と戦い続けているのだ。 「まぁ、膀胱をコントロールするのは初めのうちは難しいものです。ある程度は不可抗力を認めましょう。その分、私の奴隷が頑張ってくれると思いますよ。どうやら、『センパイ』は後輩思いのようですから」 言葉遣いは優しいが、これは確実に工藤の不興を買ったようだ。工藤が何事かを矢上の耳元で囁くと、矢上はにやりと口の端を持ち上げて人の悪そうな笑みを浮かべた。 「いいぜ。面白そうだ。お手並み拝見ってとこだな」 白衣姿のご主人様達の密談って格好いい、などと現実逃避とも思える感慨が浮かぶ。雛木の畏れと憧憬の浮かぶ視線を受け止めた工藤は、薄く微笑んだ。 この素敵な工藤に誠吾の分も責めてもらえるのかと思うと、雛木は恐ろしくて嬉しくて複雑に高鳴る胸の苦しさに眉根を寄せ、はぁと小さく溜息のような吐息を吐く。誠吾は誠吾で、どうやら自分は解放されるようだと、隠し切れない安堵の息をついた。 その一瞬の弛緩を見計らい、矢上の手で誠吾のブジーが一気に引き抜かれた。 「うああぁぁぁっ!!!」 敏感な部分をこすり上げられる感触に悲鳴を上げ、診察台の上で身をよじってのたうつ。とっさに股間を抑えようとした誠吾の手は工藤に押さえつけられ、「汚い手で触らない」と、子供にするような注意が与えられた。 急な展開に理解が追いつかず、ただ動揺しているだけの雛木は、誠吾が隣で可哀想な目に遭うのを呆然と見つめるしかなかった。 「じっとしていなさい」 工藤の厳しい叱責に硬直する誠吾は、顔を真っ青にして矢上の手元を見ていた。滅菌済みを表す包装を剥がした矢上は、ゴム手袋に覆われたがっしりとした手で、細長いチューブを取り出している。何をされるのか見当がついたようで、誠吾は小さく、ゆっくりと首を横に振った。 「カテーテルは柔らかいので、意外と痛いですよ。どんなに屈強な人間でも否応なく漏らすものですから、あなたも安心して漏らしなさい」 どう安心すればいいのかわからない工藤の言葉が終わるか否かの内に、矢上の手が誠吾のペニスをつまみ、躊躇なく尿道口にカテーテルを挿し込んだ。 「いひぃっ」 急激に与えられた痛みに目を見開き、自らの股間を見下ろした誠吾はガタガタと全身を震わせている。 「案外すんなり入るな。ブジー様様ってとこか」 感心したように言いながら、矢上の手は休むことなく、くっくっとチューブを送り込んでいる。本人は不器用だと言っていたが、思い切りの良さが幸いし、カテーテルは順調に誠吾のペニスへと飲み込まれていった。 「あああっ」 前立腺付近に辿り着いたのだろう、誠吾が身を引きつらせて悲鳴を上げる。だが矢上は手を止めず、そこを強引に通り過ぎ、カテーテルの先端をついに膀胱まで到達させたようだった。 「やっ!ヤメっ!嘘っ!うそうそうそっ!」 切羽詰った誠吾の声と同時に、カテーテルの内側を勢いよく黄色い液体が通った。管全体が満たされるのは一瞬だった。パンパンになった膀胱は、強引な侵入者にいとも簡単に篭絡してしまった。 だが、管を通った液体はどこにも排出されない。カテーテルの端を持っている工藤が、折り曲げて摘み、流れを堰き止めているのだ。特別に用意されたかなり長いカテーテルは、全体が満たされた状態で、押し広げられた誠吾の尿道口と工藤の指先との間でたわんでいた。 「濃いですね」 まじまじとカテーテルを満たす液体を見た工藤が一言、簡潔に感想を述べた。 確かに、半透明の管越しでもわかるほど、液体はオレンジがかった濃い色をしていた。我慢していたから仕方がないことではあるが、工藤の声でそんなことを聞かされた雛木はかぁっと頬を染める。 だが、誠吾は恥ずかしいどころの騒ぎではないのだろう。 「見たら駄目っすっ!見ないで下さいぃっ!」 と号泣している。 「しょんべん見られるの、恥ずかしいなぁ誠吾。工藤が手ぇ離したら床にぶちまけちまうなぁ?」 矢上がにやにやしながら更に羞恥心を煽る。 誠吾はわぁっと声を上げて泣きながら、工藤に向けて 「離さないでください!ごめんなさい、離さないでほしいっす!」 と哀願した。 とても哀れを誘われる光景の中、雛木は矢上が勃起していることに気付いてしまった。 「おしっこ見ないで下さいって言ってみな」などと言いながら、タイトなブラックデニムの股間をパンパンに盛り上げている。 「矢上さん……子供の頃、好きな子をからかったりいじめたりするタイプだったでしょう」 雛木が思っていても言えなかったことを、工藤がじろりと横目で睨んで言ってくれた。 「愛あるいじめだぞ。泣いたらちゃんと可愛いって褒めてやってたし」 悪びれることのない矢上の言葉に、相手をする気が失せたのか、工藤は無視して誠吾に向き直った。 「誠吾くん、非道な主人ではなく、先輩があなたの苦境を救ってくれますから安心なさい」 この状況で何ができるのかわからず雛木は戸惑うが、誠吾が涙ながらに縋る視線でこちらを見ているので、ひとまず大丈夫だと頷いた。 どうにも誠吾の泣き顔には庇護欲を掻き立てられる。矢上への恋心ゆえにこんな仕打ちに耐えている誠吾に、何かしてやれることがあるのならしてやりたい。 ブジー入りの勃起を晒しているこの状態では、頼りがいがあるようにはとても見えないだろうが。 覚悟を見て取ったのか、工藤がようやく雛木を見てくれた。その手には、相変わらず誠吾の尿が通ったカテーテルが握られている。 一体何をされるのかと訝っていると、工藤が空いている左手で雛木のペニスの裏筋をそっと撫で上げた。 優しい仕草とは裏腹に、尿道の内側にも強い快感が駆け上ってきて、思わず顎を上げて「あっ……」と声を漏らす。 その瞬間、一気にブジーが引っこ抜かれた。 「うああぁぁっ!」 痛みとも快感ともつかない衝撃に叫んだ直後、強すぎる摩擦を受けたその場所に、強烈な痛みが生じた。 裂けたのかと思って慌てて自らの股間に目をやれば、なんと先ほどまでブジーの背が見えていた場所にカテーテルが刺さっている。黄色い液体で満たされた、あのカテーテルが。 信じられない思いで管を視線で辿ると、その先は過たず誠吾のペニスに刺さっていた。 二人の奴隷は今、一本の尿道カテーテルで繋がれたのだ。 《続》

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