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第3話
射的は500円で5回打つ事が出来る。棚に並ぶ景品を狙って撃ち棚から落ちれば、その景品を貰う事が出来るゲーム。
「ほな5回勝負な。どの景品を狙ってもええって事で、どっちが多く景品ゲットできるかで勝負や」
落とした景品が多い方が勝ちって事なら、小さくて軽い物を狙う方がいい。
だけど、これがなかなか難しい。玉を詰めレバーを引く。狙いを定めて引き金を引くとレバーが戻ってコルクの玉が飛ぶ。
水野は身を乗り出し、腕を伸ばして、楽々と片手撃ちをしているが、銃を片手で操作するのは結構難しい。重いし、脇を締めていないと、狙いがブレてしまう。翼は左手を添えて、右手で引き金を引いた。
「おっ3個目ゲット!」
ガッツポーズをする水野へ視線を巡らせた翼の視界の端に、翔太と相田の姿が映る。
「……っ、俺、まだあと二発残ってるんやから、勝負はまだついてへんっ」
なんだかあの二人のことを直視できない。そんな気持ちのモヤモヤが大きく広がってくる。
だからそこから目を逸らし、翼は銃を構えた。カーッと頭に血が昇っていた。気持ちが焦ったまま、引き金を引く。
「――痛ッ」
撃った瞬間に、銃に添えていた左手の薬指に激痛が走り、翼は思わず持っていた銃を落としてしまった。
「どうした?」
「翼っ?」
水野の声と、翔太の声が同時に聞こえた。二人は、痛めた左手を右手でギュッと握り、蹲ってしまった翼に駆け寄ってくる。
何が起こったのか、翼には痛みの原因がすぐには分からなかった。
「あー、撃った時に、バネで戻ったレバーに指を挟んだんやないか?」
「翼、指、見せてみい」
右手でギュッと押さえた左手の薬指は、燃えるように熱くジンジンしている。右手を外すのを躊躇うくらいに痛かった。
握っていた右手の指を、翔太がそっと外す。
「あ、血豆ができてる」
「え?」
翔太に言われて、痛すぎてギュッと瞑っていた目を開ける。薬指の腹に、大きな血豆ができていた。
「冷やした方が、ええな。確か公園の方に水道あったよな」
翔太が翼の腕を掴み、立ち上がらせた。
「俺、翼と行ってくるわ」
それだけ言うと、翔太は翼の腕を引き、走っていく。
「え? おいっ、後で、連絡せえよ!」
後ろから聞こえてきた水野の声は、もう遠い。
そこに居たのは水野と相田の二人だけで、逸れてしまったのか、健と瑛吾の姿はどこにも見えなかった。
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