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第9話 走る

山の中、木々を器用に避けながら 疾走する獣。 全体的に淡灰色をし暗色の斑紋があり 正中線に黒い筋模様が入っている。 尾は太く長く体の半分はありそうな長さ。 時折跳躍して岩場を飛ぶがその飛距離は 約10mを超えていた。 太く長い尾でバランスをとりつつ 止まることなく疾走を続ける。 横顔は前頭部が盛り上がっている。 耳介は小型で鼻面は短く 前を見据える目の虹彩は灰黄色をしている。 寒さには強いが暑さは苦手な為 日が落ちてから早朝に掛けて移動し 日の高い時間帯は 休む前に仕留めた獲物を捕った後 適当な岩穴で休む。 気が逸って仕方がないが焦って何かあれば もっと遅れてしまうから警戒は怠らない。 本当ならば人型で休んでも良いのだが そこまで気が回らず飛び出してきてしまった為 獣体のままの方が楽なのだ。 獲物を食べ体を休めつつ今日に至るまでを 振り返る。 親元を離れ顔見知りが番ったりするのを見て 羨ましいという気持ちはない訳ではなかったが それよりも何かが足りないという 気持ちがずっとして その事ばかり気になりそんな気持ちに なれなかった。 その内年配の同じ種族の知り合いから 片割れがいるんじゃないかと言われた。 妙に納得すると同時に片割れが現れるまで この満たされない思いを抱え続けるのか というショックが大きかった。 周りに片割れ持ちがいなかったせいで 何もわからずただ定期的に役所に情報を 見に行くというのを何年も繰り返していた。 だが今から半年前位にちょうど長期依頼中で その日の分をこなして拠点に 帰途についた時だった。 心臓がドクっと脈打った気がした。 満たされない足りない飢餓感が形を変えた。 片割れが現れたのか?確証はなかったが そんな気がして急いで役所に行きたかったが 長期依頼が終わらない。 やっと終わって急いで役所に行ってみれば 招かれ人の情報が入っており すぐにどこにいるか 確認してすぐ飛び出した。 本来なら役所にまず話を通さねばならないが 確認するまでもなくこの招かれ人は 俺の片割れ俺の番だ。 そう思ったらいてもたってもいられずすぐに 行ってこの腕に抱え込まねばならない。 早く1日でも早く番のもとに行かなければ それしか頭になく街道を通るのも煩わしくなり 旅の準備もせず飛び出して直線距離で行ける 山を全力疾走して1月。 本来ならあと2月はかかるだろうが 山越えの直線距離で来てるのであと1月位で 着ける予想だ。 番は大丈夫だろうか。 大変な目にあってはいないだろうか。 自分を受け入れてくれるだろうか。 あぁ早く少しでも早く会いたい。 会って抱きしめて抱え込んでそして 絶対離さない。

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