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第12話 少年覆われる

アザミさんの話から更に1月 マシューさんの知り合いの大工さんに 離れの改装をお願いした大工さんのとこに 新しく入った従業員に獣人の人が いてその人が伴侶さんの話を聞いて このペースじゃ間に合わないと思うと 言って急ピッチで改装する事になった。 更にその獣人さんの助言もあって 部屋を分けるのは宜しくないうえ 絶対離れないから意味がないし 結局また改装になって無駄にお金が 掛かるからやめておけと言われた。 やけに詳しいと思ってよくよく聞くと 招かれ人と番になった知り合いがいて 似たような状態になった為よく分かるし 自身も獣人なのでよく分かると言われ なら素直に助言に従おうとお願いしたり していたらアッという間に改装が終わった。 この話を聞いたのが改装の最初の方で 本当に良かったと心底思った。 改装の合間に僕は その獣人さんの知人と招かれ人は どういう風に出会ったのか初めて会う番に 対してどんな感じだったのかを聞いた。 僕の不安は最もだとその時の話を 教えてもらった。 知人は鷹の獣人さんでやはり役所を 通してとかの段取りはすっ飛ばして 招かれ人のとこに行きそのまま テンション上がって掴んで飛び去って 行ってしまったせいで誘拐かと大騒ぎに なったらしい。 鷹の獣人の周りの人達が飛び去る直前 まで丁度一緒にいたから片割れだと 分かってひとまず騒ぎをおさめて どこに飛び去ったのか捜索するかどうか 話し合ってる最中に招かれ人に怒られて 一緒に戻ってきたそうだ。 その時も怒られてるにも関わらず 嬉しそうで片時も離れずにいたらしい。 招かれ人の方も猛禽類は怖くて 苦手なのに安心するというなんとも 微妙な感じだとぼやいていたが 特に嫌がる事もなくそばにいたそうだ。 今もそんな感じでなんだかんだと 仲良く暮らしていると聞いて ちょっとホッとした。 僕には本当の家族がいない。 だから不安もあるけれどそれと同時に 自分の家族が出来るという期待感も 結構ある。 院のみんなも家族ではあるけど ずっと一緒ではない。 別れが必ずおとずれる家族だった。 だから自分だけの家族というのは ちょっとドキドキする。 特にこの世界にきてからマシューさん夫妻が よくしてくれるので余計に家族というのを 意識するようになった。 僕は働き出して割と早い時期に 住み込みで働くようになったから 改装が終わってからの引っ越し作業は そこまで大変じゃなかった。 まぁ物もそんなに持ってないし。 今日はマシューさんは寄り合い マーサさんは女子会(本人談)で 昼からはお店が休みになったから 気晴らしに散歩に出てきた。 本当にここは賑やかだなぁ。 特にいるものもないからお店を ひやかしながら歩いてたら 暗くなったと思った瞬間誰かに 抱きこまれた。 「みつけた」 めっちゃいい声が結構上から聞こえた。 息できない程じゃないけど決して 抜け出せない絶妙さで抱き込まれてる。 パニくってるのに落ち着くという よくわからない状況に頭が働かない。 僕を抱き込んだ人もそのまま動かない。 けど何か右腕がモフモフする。 なんだろうか。 というかドキドキしてはいるけど 段々落ち着いてきた。 もしかしなくてもこの人伴侶さんだ。 なんというかこう安心するっていうの 身をもって体験してる。 っていうかここ街中なんだよね。 ちょっと恥ずかしくなってきたんだけど。 とりあえず移動したい。 あっけど何だろうこれ。 安心感凄すぎて離れがたい。 いやでも、ここはって思っていると おでこの近くからゴロゴロ 聞こえてきた。 ご機嫌か!!!これは!!! あれだ!!!萌え!!!! いやその前にこの体制どうにか しなければいけない。 そっと手を巻き付いてるものに 沿わせて軽くポンポンしてみる。 あああああ!!! モフモフ具合が気持ちいい!! すごっ!!!手触りすご!!! 興奮しつつもゆっくり話かける。 「あのっちょっと良いですか?」 ぎゅうううううう ああああさっきより抱き込まれて 動きにくい!!!! っていうか息苦しさがないのに ぎゅうぎゅう出来るって凄いな。 変なとこに感心しつつまた 話かける。 「あなたが僕の伴侶さん..「そう」すか?」 あっちょっと食い気味に肯定。 そうか、この人が僕の伴侶さん。 うわああああ。なんだなんだ!! 思ってた以上に拒否感がない!! 何だろうこの安心感。 分かんなすぎて怖いのに手放せない。 あっ役所!!そうだ!!!役所に 行かなきゃ!!! 「やっ役所!!」 「ん?」 「役所に行きましょう!!  あなたと来るように言われて  いるんです。」 「役所...!!...分かった」 思い至ったらしい彼はそのままの 状態からちょっと僕を浮かせて 抱え込み歩き出そうとしたので 慌てて止める。 「ちょっ!!ちょっと待ってください!」 そういうとすぐ止まってくれたので 返事を待たずそのまま伝えた。 「役所行く前に顔見たいです!  自己紹介もしたいです!!  見えないまま、知らないままは  嫌です!!  ぼっ僕達家族になるんでしょう?  先に2人で自己紹介位したいです!!」 途中恥ずかしくなってギュッと 目を閉じて話しきってから 抱き込まれてないのに気付き 目を開けた。 あんまり大きく表情は変わってないけど 目は凄く優しくてその色がとても 綺麗で思わず見惚れた。

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