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遊戯の時間 03

「ま、さっきの言葉遣いは褒めてやらんこともない」 俺の言動一つで先程までとは打って変わって優しく撫でなられ、変わり様の早さに嫌悪感と吐き気がする。 言う事を聞けば優しくなり、気に入らなければ手を出す。 これが大神の言う”躾”とやらなのかも知れないが正直一体何がしたいのか理解不能だ。 むしろ吐き気しかしない。 だが俺はこれを逆手に取ってやる。 今この瞬間から逃げ出せたら後はどうにかなるだろう。 だったら今だけでも言う事を聞いてさっさと解放してもらう。 それが俺の作戦。 ただし後戻りの出来ない、まるで綱渡りのようなもの。 風の吹き荒れる崖と崖の間を渡す一本の紐の上を、命綱無しで渡るような無謀な行為。 気づかれた瞬間全てが終わり.... 一気に奈落の底へ真っ逆さまだ。 だから絶対に気づかれるわけにはいかない。 俺の真意を。 俺の言動の全てがその場凌ぎの一時的な虚像であり、心の奥底ではずっと毒を吐き続けていることを。 絶対にだ。 絶対に気づかれてはいけない。 これは賭けであり、遊戯(ゲーム)。 どっちが勝つかの真剣勝負だ。

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