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獣の本性 01
煮え滾る怒りと殺意に任せて蹴ってやろうと脚を動かす。
あわよくば当たればいい、それで離れてくれりゃ万々歳。
そう思った。
しかしそんな淡い期待も大神の力の前では打ち砕かれる。
「うっわ、足グセ悪っ。強ちあの噂も間違いじゃないってか」
蹴ろうとした脚は見事に捕まり、挙句、俺の事も病院送りにしてみる?とクスクス笑って挑発される。
お望みならマジで送ってやろうか.....。
病院送りなんかした事ないけど、このクソオオカミ相手ならなんだか出来る気がしてくる。
怒りが収まるまで、気の済むまで、一旦此奴を殴りたい。
「チッ.....マジで送ってやりてーよこのクソ野郎が」
「へー、そんなこと言っちゃっていいんだ....?ふぅん」
スッと大神の瞳から光が消える。
あぁ、またこの眼だ。
大神が本気でイラっとした時に不意に出てくる怒りの眼。
この眼をしてる時の大神は心の底からお怒りだ。
まぁだからといって態度を改めるつもりは微塵もないが...
「ゔっ、.....ぐ......」
「.....お前さ、自分の立場と状況まだ分かってねーの?」
無造作に髪を掴まれ首が仰け反る。
今まで以上に冷徹な視線、汚い口調、乱暴で横暴な態度。
((....まーだ本性隠してやがったのか、この狼....っ))
最初に出したと思っていた裏の顔はどうやら奴の本性ではなかったらしい。
自分の本性や素も大概だが、大神の持つ本当の素は俺が思ってた以上のようだ。
しかしだからと言って今にも噛み付いてきそうな勢いで顔を近づけてくる大神を前にしても俺の態度は変わらない。
「....ははっ、......知らねーなぁ....?」
「っ!!!」
従順なフリがバレた俺は全力で反抗して易々と大神の沸点を超える。
馬鹿にするように鼻で笑っては、大神の顔面ど真ん中に向けて唾を飛ばした。
別に立場も状況も分かってない訳じゃない。
依然俺が犯されかけてる状況は変わらないし大神の獲物であることも変わっちゃいない。
でも....
.....だからなんだってんだ。
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