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最終選択 02

軽く放り投げられ落とすまいと慌ててキャッチする。 確認すると、チラリと見えた通り大神の電話番号とLINeが新しく登録されていた。 「今度から携帯で呼ぶから。 呼んだら絶対に来いよ、いいな」 「誰が行くかよボケナス。 てかロック番号盗み見るとかふざけんのも大概にしろよ」 「黙れよ、これはお願いじゃなくて命令だ。 削除したら.....分かってるよな?」 突如増えた番号を削除しようとした指を 画面から数ミリの地点で止める。 ....バレてた。 小さく舌打ちをしてチラリと目の前の男を見上げる。 削除したらどうなるかなんて大方予想はつく。 それでも消したい俺はほんの少しの葛藤をする。 今ならまだ、逃げれるんじゃないか....と。 けれど。 無言の圧力に耐えられず諦める。 「......っ。死ね、このクソオオカミ」 「ふぅん、....そんなこと言っちゃっていいんだ?」 消すことを諦めた俺は再び小さく舌打ちして悪態を吐く。 態度を改めない俺に目を細め近づいて来た大神。 そして屈み込んで耳元に顔を寄せてくる。 『.....写真ばら撒くぞ、コラ』 ビクッと固まる俺の耳元で囁かれた最低最悪な言葉。 開いた口が塞がらない。 言葉も出ない。 ばら撒く? ばら....撒く....???? ((.......最...悪.......っ)) フルフルと震えながら金魚のように口をパクパクさせる。 散々忠告されても懲りなかった俺も大概だろうけど。 構わず暴言を吐き連ねていたらこのザマだ。 もっと上手くやる方法だってあったはずだけど。 大神の最終手段に手を付けさせてしまった。 写真を盾に脅すなんてどんな神経してんだ。 脅迫じゃねーか。 坊ちゃんのくせに、やる事意地汚ねぇ....。 そんな事思ってももう現実は覆らない。 「俺の言うことは絶対、いいな?」 「....っ」 「....返事は?」 「....っ、は、い......」 「よろしい」 こいつの言うことは絶対。 前にもした約束。 半ば強引に、無理矢理改めて約束させられた。 「じゃー、改めて聞くけど」 「....?」 「式典。もちろん.....出るよな??」 もう一度約束を交わしたところで改めて聞くよ。 そんな前置きと共に改めて選択を迫られる。 「ぁ.....」 「出ないって言ってもいいんだよ?まぁ......ね?」 とびきりの黒い笑顔で携帯をひらひらさせて見せる大神。 妙な沈黙が、まるで 「まぁ....『ばら撒かれたいなら』....ね?」 と言ってる様だ。 「....で、る.....っ」 「賢明な判断だね」 これ以外の選択肢なんかなかった。 というかそもそも選択肢ですらない。 それでも出ると言ってしまったのは俺自身。 今更取り消しなんて この性格悪いオオカミが聞いてくれるはずもない。 ペロッと満足そうに舌舐めずりする大神。 「あー、そうだ。言い忘れてた」 「....んだよ、まだ何かあんのか」 服を着てさっさと出て行こうとドアノブに手をかけた時。 間延びした声が背中越しに聞こえて立ち止まる。 「授業もちゃーんと出ろよ」 『....見てるからな』 背後にぴったりとつけ、扉に手を付き耳元でそう話す。 「....っ、死ね!」 肘鉄をかまして(当たらなかったけど)大神を引き剥がし、 逃げるように部屋を去る。 忘れ物だよ、とブレザーの内ポッケに何かが突っ込まれたけど、気にせず一目散に生徒会室を飛び出た。

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