78 / 115

教室 03

窓際の一番後ろ。 ぽつんと1つ置かれた机は多分俺の席。 邪魔者を弾く様に置かれた、 何年もの間移動したことのない俺の机のポジション。 周りの声や視線を無視してドカッと座り、周囲と自分の世界とを遮断する様に机に伏せる。 もともとテストは受けるつもりだったのだ。 だから教室には行くつもりだった。 ただいつものイベントに式典での挨拶が追加されただけ。 授業をまともに受けるなんて約束には頷いてない。 だから式典が終わったらお昼まで受けて(寝るけど) それからまたあっちに戻ろう。 そう頭の中で予定を立て、先生が来るまでの間机に伏せて過ごす。 「はーい、ではテストしまーす。 机の上のものを全て片付け....て.......!?!?」 担任であろう人の声でむくっと顔を上げる。 教卓にテストを置いた教師と目が合い、彼の顔が驚きで満ちた。 言葉は最後まで続かず、喉の奥に一瞬引っ込んだみたい。 ゴホっと咳払いをしてから続きを話しだした。 そりゃそうだ。 テストは毎回受けてても、こんな余裕を持って席に座ってたことは数少ないからな。 前の席から順番に紙が配られ、先生の合図でクラスにシャーペンの走る音が響きだす。 国語数学英語の3科目で基礎的な小テスト。 トータル1時間のテストを俺は数分で解き終えた。 出来はいつも通りだろう。 確認もそこそこに残り時間を睡眠時間に当てる。 「.....はい、そこまで!全員、筆記用具置けー」 回答用紙回収すんぞー、との担任の声に起こされ...た訳ではなく。 前の席の子に肩を叩かれて起こされた。 「ん....ぁ.....」 「これ....もらっても....?」 「ん....」 欠伸を噛み殺して目をこすり、睡眠を妨げた相手をチラリと見る。 名前もわからない見覚えのない女子。 俺とは目を合わせようとせず、視線を逸らしたまま腕の下に敷かれた回答用紙を指差している。 その頬はちょっと赤く染まっていた。 じっと見つめても目は合わず、逸らすばかりか次第に俯かれてしまう。 やっぱ怖がられてんのか、俺。 なんて思いながら無言で用紙を差し出した。 そして眠気に抗えない俺は再び机に伏せる。 回収が終わった担任は「講堂に移動しとけよー」とだけ言って教室を去り、再び賑やかさを取り戻したクラスメイトたちは次々と移動を始める。 ガヤガヤと騒がしくなる廊下。 ある程度人の波が収まってから自分も講堂へと向かいだす。

ともだちにシェアしよう!