79 / 115
教室 04
「あれー、煌じゃん。お前が逃げずに式典に向かうなんて珍し....え、なに?もしかして明日雪でも降る?」
「.......おい.....しばくぞテメェ」
椅子から立ち上がってすぐ。
近づくなオーラ全開の俺に駆け寄り声をかけてくる湊。
湊とはどうやら今年もクラスメイトらしい。
「今年もお前と同じクラスとか、まじ最悪」
「仕方ないだろー、俺お前みたいに頭良くないんだからさ.....。そう威嚇すんなって」
「......うざっ」
「え、ひどいっ!幼馴染に向かってうざいだなんて.....」
俺泣いちゃう...とシクシク泣き真似をする湊。
「やっぱうざいわ」
「えええ、ひどーーい」
2人で笑い合いながら並んで講堂へと向かう。
その様子を見た周囲が再び騒つく。
けれどさっきとは違って苦しくはならない。
湊との冗談交じりの他愛もない会話が心地よくて。
湊がいるだけで俺の世界は違って見える。
うざいと連呼してはいるけど。
こいつが友人でで良かったと。
クラスメイト良かったと。
本当は心から思ってる。
湊がいなかったら....
奴に何を言われようと何をされようと、
俺が教室に足を踏み入れる事はきっとないだろう。
「もー、ほんと酷いなー。でも.....どういう心境の変化? お前が式典に出て挨拶もするだなんて。なんかあった?」
けれどそんな友人の厄介な部分が一つ。
湊は無駄に勘が鋭い。
それも俺のことに関しては特に鋭い。
こいつにだけは隠し事も嘘も通用しない。
良いか....悪いか。
今だって「大神先輩と何かあったの?」なんてかなり痛いところを突いてきやがる。
なんで"大神と"何かあったって分かるんだ。
ほんと不気味。
「別に....なんもねーし....」
何もなかった.......と言うのは嘘だけど。
あんな醜態、いくら幼馴染でも晒せるわけがない。
何もないと否定する。
「そう?まぁなんでもいーけど。
"大神先輩と"って部分は否定しねーのな」
「.....あ...」
.....しくじった。
些細な情報が漏れた瞬間、大概の事はバレる。
現に、湊はニヤニヤと俺を見て笑ってる。
最悪だ....。
「ふぅん....また、聞かせろよ」
「あ゛?誰が話すかよ」
「じゃ、また後でね?挨拶頑張って〜」
「あ、ちょっ....人の話聞けよ!...くそっ 」
人の話は流して自分の言いたいことだけ言い切った湊。
ひらひらと手を振りながら席に向かっていく
その背中を思いっきり睨みつけた。
ともだちにシェアしよう!