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式典 01

湊と別れた俺は前列の方に向かって階段を降りていく。 久々の式典に辺りをキョロキョロしてると、 大嫌いなあいつがひらひら手を振ってるのを見つけた。 「ここ座ってたらいいの?」 「そう、俺の隣。嬉しい?」 「全くもって嬉しくないね。寧ろ最悪」 「安心しろって、先生達いるし何もしないから」 表面スマイルで言ってのける大神に 居なかったら何するつもりだったんだよ、と軽く睨む。 「名前呼ばれたら先生達に一礼して壇上に上がる。学園旗に向かって一礼して演説台の所に行く。あとは渡した紙の通り喋る。それだけだ、簡単だろ」 はぐらかされてしまい釈然としないがまぁいいだろう。 椅子に腰掛けながら段取りを頭に叩き込む。 理事長の挨拶、校長の挨拶、新任の先生の紹介、 新入生代表の挨拶(俺の出番)、在校生代表の挨拶、 生徒会長の挨拶、部活紹介、などなどなどなど....。 自分の出番さえ分かれば正直後はどうでもいい。 大方の流れは右から左へと聞き流した。 「んー...だいたい分かった。てか渡した紙って何?」 その中で一つ大事な疑問を投げかける。 大神の言う紙とやらを俺は知らない。 受け取ってない。 無ければ挨拶を読むことは不可能。 適当に好き勝手喋っていいなら構わないけど.... やったら後でぶん殴られそうだからやめておこう。 俺の疑問に対して、まだ気づいてないんだ?と笑われる。 何のことか分からず俺は首を傾げる。 「...ここ。俺入れてあげたじゃん、忘れ物」 トントンっと胸元を指で突かれる。 何のことか分からない俺は再び首を傾げる。 忘れ物....ってなんだっけ。 『朝、生徒会室、忘れ物』 耳元で三単語囁かれ、これでもまだ分からない?と見つめられる。 朝..... 生徒会室..... 忘れ物..... 朝.....生徒会室..... 俺はあいつに.......キス...されて...イかされて.... それで.....っ 『忘れ物だよ』 「....あっ.....」

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