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無自覚 01
「おっつかーれさん」
「....ぁ、あぁ....さんきゅ」
「....なんかあった?」
もやもや考えながら教室に戻っていると、何処からともなく現れた湊に肩をたたかれる。
歯切れ悪く返事を返す俺に、心配する声が返ってくる。
湊に相談できれば一番いい。
良き理解者でありアドバイザーの湊なら、この気持ちの正体を知ってるかもしれない。
俺が、感じてるものの正体を。
けど....
あいつとの出来事はできれば隠し通したい。
犯されて。
キスされて。
イかされて。
写真撮られて。
弱み握られて。
そんな散々なことされておきながら気持ちよくなって。
ちょっと優しくされて。
サプライズされて。
頑張れなんて言われて。
普段見ない姿見て。
キラキラしてて。
そんな単純なことに俺の心臓は反応する。
((....なんて。言える....訳がねぇ....))
「いや.....別になんも」
「.....。あっそ?」
あえて詮索してこない友人にホッとする。
散々あいつに振り回されてるんだ。
こんな気持ちどう考えてもおかしいに決まってる...けど。
他に.....あいつはどんな顔をするんだろう。
どんなものが好きなんだろう....なんて。
「いやいやいや、別にどうでもいいし...!」
「どうした?」
「ぁっ、いやっ、なんでもない...」
本人すら無自覚の小さな好意と好奇心が
心の奥底で芽生え根を張り始めた瞬間。
しかし、当の本人はそんな事つゆ知らず。
というか認めたくなくて。
心の奥底に蓋をして忘れようとしていた。
その根が....今後も成長し続け、
やがて核から離れられなくなるとも知らずに....。
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