94 / 115

揺さぶり 02

真上から見下ろす湊の顔を見たくなくて。 ギュッと目を瞑って横をむく。 「.........言わねーとキスする」 「はっ!?ちょ、まっ....おい!?」 投げられたそんな一言に慌てて湊を見上げる。 今........なんて言った。 キス? キスするっつったか?こいつ。 あいつと....同じことしようってんのか....!? 冗談じゃない.....っ!! 頭の中で、湊の言葉を噛み砕く。 まさか、まさか、そんなはずがない。 あの湊が、俺にキスするだなんて言うはずがない。 そう思いたくてもう一度湊を見る。 けど真剣に俺を見下ろす顔からさっきの言葉が嘘だとは到底汲み取れなくて。 ゴクッ、と唾を飲み込んだ。 ドッドッドッ、と。 大神の時とは少し違った鼓動の早さに襲われる。 「5...4....」 「ちょ、まっ....ッ!?なにそのカウントダウン!? 待て待て、落ち着け、落ち着け湊!!!」 「3......て、落ち着くべきなのはお前の方でしょー」 俺が一人慌てている間にもカウントは進み 湊の顔は着々と近づいてくる。 そして....コツン、と。 互いの額が合わさった。 おでこから湊の熱が伝わってくる。 俺の熱も伝わってしまいそう。 至近距離でじーっと見つめられ、 行き場のない視線をウロウロ彷徨わせる。 言わなければキスされる。 言ったら言ったできっとネタにされる。 ((.......どう.......すればいいんだよ....)) 押し倒されているから逃げようにも起き上がれない。 互いのおでこが合わさっていて身動きも取れない。 湊の吐息が口にかかる。 ....もしかしなくても。 相当...ヤバイんじゃないか?この状況....。 「2.....1......」 「〜〜ッ、...お、お前も同じことすんな、ばか!!」 「.........ふぅん。....同じこと、ね........」 おでこが離れ、近く距離。 あとほんのちょっと。 どちらかが動けば触れてしまいそうな二つの唇。 けれどもそれは俺に触れる事なく、すっと離れていった。 あぁ、.....またやってしまった....俺のバカ.....。

ともだちにシェアしよう!