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揺さぶり 03
また....やってしまった。
上手いこと乗せられてしまった。
耐えかねて耐えかねて吐き出した言葉。
早くも後悔で頭を抱えている。
覆いかぶさるのを止めた湊が俺をじっと見つめる。
「会長にキスされたんだ?」
「ん.....」
「ふぅーん....、なるほどねぇ...」
そんな湊にもう隠せないと悟った俺は静かに頷いた。
そしたらニヤニヤと見られる。
幼馴染に迫られて口を滑らせてしまった俺は
どうやら押しに弱いらしい。
「....そんなこんなで式典に出ることになって....」
「へぇ.....そんなことが....」
「そう、そんなことがあったの。朝から大変だったの」
写真の事とかイかされた事とか色々伏せながら
朝の出来事を簡潔に。
となると結局、いきなりべろちゅーされた....とくらいしか言えなかった。
「ふぅん....それ以外にもまだ何かありそうだけど、」
満足したんだかしてないんだか分からない返事と
色々勘付いてそうな湊の呟きに思わず肩が跳ねる。
「...今なんつった」
「別に?何も言ってないよ」
「......」
「......」
眉を顰める。
そんな俺を笑顔で受け流す湊。
沈黙が俺たちの間に漂った。
「で?煌は会長のことどう思ってんの?」
「どう、って.....ウザい」
「え、てっきり気になってるのかと....」
「なんでそうなる」
先に沈黙を破ったのは湊。
しかし変な方向に話が行きそうでバサッと切り捨てる。
「え?だって意識してるからさっき飛び起き.....」
「ちっげーよ!!一々引っ張ってくんな、ばか!」
「だって反応面白いんだもん。今だって顔真っ赤だし」
「ッ!!!! 違う!!断じて違う!!!!」
必死で否定する俺に
やっぱ意識してるんじゃん、とニヤニヤ笑う湊。
その様子はすっかりいつも通り。
押し倒された時の雰囲気は消えている。
なんだか最近、湊のあそび方がエスカレートしてる気がする。
さっきだってそうだ。
機嫌が悪くなってトーンが低くなることはしょっちゅうあったけど、あんな...迫ってくることは今までなかった。
少しいつも以上に意地悪してきたりからかってきたり。
そうやって素直じゃない俺の口から
上手に真実や本音を引き出してくる。
.......けど。
あんな本気か冗談かすら分からないことするなんて。
どう対応すれば良いか分からない。
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