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体育05
追ってこないことを確認し、舞台上から大神を見下ろす。
「乗るなって先生言ってる」なんて優等生ぶりを発揮してるけど顔には本音が書いてある。
「今すぐ上って引っ張り下ろしたい」って書いてある。
それぐらいムッとした顔をしてて恐怖すら覚える。
「.....降りてこいよ」
「やだよ、お前何するかわかんねーもん」
「何もしないから。とりあえずこっちこい」
「やだ」
降りてこい、やだ、降りてこい、やだ、と
エンドレスな会話を繰り返す。
「わかった、わかった。
じゃあとりあえずここ座れ、それならいいだろ」
終わらない押し問答に息が切れかかる。
それは大神も同じでほんの少し息を荒げていた。
舞台縁をトントンと叩き、とりあえず座れと促される。
さっきの教師の声で皆がこちらに注目し始めている。
プラス、聞こえない俺たちの会話に周囲が静かになり始めてることに気づいた。
大神も気づいてるらしく「いいから早く」と急かされた。
「.....なんかしたらぶん殴るからな」
「わかったから、しつこいな」
「お前がいうな」
何もしない事を条件に渋々舞台から足だけ下ろして座る。
しばらくすると皆興味を失って各々の遊びに戻り、体育館内は当初の騒がしさを取り戻していった。
「で、俺に何の用?」
「特に何も?」
「......は?」
こんだけ追いかけてきたんだ。
何か用があるのかと思えばこの通り。
舞台の床に肘をつき、寄り掛かりながら用はないと答えが返ってくる。
.....まじで一旦殴りたい。
「.....ならあっち行けよ、まじで鬱陶しい奴だな」
「やだよ、せっかく同じグループなったのに」
「女子が話したがってたろ、そっち行けよ」
「.....なんで。やだよ、面倒くさい。
お前で遊ぶほうがよっぽど面白い」
少し下から見上げてくる大神。
普段見ない角度から大神の顔を見ることが新鮮。
けどそんな余韻に浸る間も無く
大神の言葉にイラっとして吠え返す。
「俺を勝手に遊び道具にすんな!ほっとけよ!!」
「パートナーの後輩に絡んでなにが悪い」
「俺は望んでなってない!!!」
「でもサインしたのはお前自身だろ?」
「そっ、れは.....そうだけど...」
痛いところを突かれて押し黙る。
半分くらい不可抗力とは言え、事実サインしたのは自分自身。
「だろ?」と笑顔を向ける大神を睨み、
あんなのイカサマだ....と文句を返しながら寝そべる。
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