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体育 06
「イカサマって言うなよ、戦略って言え」
「は?戦略?屁理屈言うな、ガキかよ」
「んだと、こら」
「ほら、そーゆーとこ。お前って案外俺よりガキだよな」
イカサマだろうが戦略だろうがどうでもいい。
どちらにしろ俺にとっては最悪でしかないし、
これが揺るぎない事実である事に変わりはない。
放課後の呼び出しだけに留まらず、
授業でまで付きまとわられることになるなんて.....
たまったもんじゃない。
((変に近づきたくないのに....))
近づくたびに鼻をくすぐる柔軟剤の香り。
反応して言葉に詰まりそうになるのを誤魔化すため。
大神を小馬鹿にしてケラケラ笑った。
そして、絶対顔を見られないように
安全を期して体の向きを横に変える。
柔軟剤の香りも少し届きにくいように....なんて。
俺の顔は今大神から1番遠い向き。
寝転がってるから大神がどんな顔してるかはよく分からない。
「ふぅん....?
ま、そういう事を言っちゃうあたりお前はバカだな」
「...は?バカじゃねーし。
バカって言った方がバカなんだよっ」
「そーゆーとこだよ」
バカとは何事だ、と。
勢いよく起き上がった俺を迎えるのはクスクス笑う大神。
それも舞台から足を下ろして俺の隣に座ってる。
下にいると思ってた其奴がいつのまにか俺の隣にいて
危うく悲鳴をあげるところだった。
思わず逃げるように舞台から飛び降りる。
「~~~~っ!!んで!
お前はいつまでここにいるつもりなのっ」
意識してしまうと熱が上がる身体にブレーキをかけ
あくまで平常心を装って聞いた。
背は舞台に向けたまま。
この向きでいれば顔を見ないで済む。
かつ自分の顔も見られないで済む。
あくまで冷静に。
平常心....平常心....。
ドッドッと早まる鼓動をぐっと押さえつける。
「....そんなどっか行って欲しいわけ」
背後で動く気配。
そして声と匂いが近づいてくる。
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