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始まり 02
「あいつ」とは俺の通う私立栖旺学園(せいおうがくえん)の生徒会長、大神優斗(おおがみ ゆうと)のこと。
通称、オオカミ会長。
まぁこれは俺が勝手に命名したものなんだけれども。
『成績優秀、スポーツ万能、おまけにとてつもなく整った顔と誰にでも等しく優しい頼れる男』というのがこいつに対する周囲の人間の評価。
高等部二年で俺の1つ先輩にあたる訳だが、俺はかつて一度も先輩扱いした試しはない。
幼等部から大学までエスカレーター式に行けるこの学園に入ってからかれこれ12年。
毎日のように授業をサボっては立ち入り禁止の屋上で睡眠学習をしている俺を、奴は懲りずに毎日叩き起こしにくる。
教師ですら咎めず諦めているのに、だ。
周りは「さすが生徒会長様、責任感が強いのね」と言うがそんな理由で動いてる訳じゃないことを”今”の俺はよく知っている。
いや、むしろ俺しか知らないかもしれない。
奴の隠れた本性....ってやつを。
散々絡まれてた少し前の俺だって知らなかったんだ。
きっと周囲には上手く隠してるのだろう。
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