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お呼び出し 01

ことの発端は約3週間前。 あと数日で春休みを迎えるというある日、俺がまだ中等部3年生のときだった。 その日は学期末テストの結果と共に今年度の成績優秀者の名前が掲示板に張り出される日。まさに生徒たちにとって一大イベントともいえる日だった。 最後の授業が終わった瞬間皆が掲示板の前へと急ぎ、自分の名前を血眼になって探しだす。 順位を見て喜ぶ者、落ち込む者、はたまた泣く者。 それもそのはずで。 学年末に掲示される最終順位によって、来年度の待遇が大きく左右されるのがうちの学園のシステム。 学年10位以内に入れば奨学金の支給対象として認められ実質30%分の学費が免除されるし、上位3位以内に入れれば50%分免除される。 さらに首席ともなれば全額免除となる上に、他にもいろいろと特権があたえられるってな感じだ。 栖旺学園は主に金持ちの子供が集まってくるセレブ校。 ただし、学力にも重きをおく方針から試験を突破した一部の一般家庭の生徒用の入学枠が存在する。 書類審査ではなく入試を受けて入った生徒達からすれば高額な学費を支払うのは困難なわけで。少しでも学費免除してもらわなければ家計を圧迫すること間違いなし。 優遇を求めてみんな必死。 .....俺とは違って。 「こーう!相変わらずお前は首席キープかぁーー?」 「うぉっ.....まーな。てかいきなり抱きつ.....」 「ぬぁぁあーーっ!またか!それも授業サボって勉強してないくせに!?ほぼ満点!?やっぱ腹立つわー」 代わり映えしない結果をぼーっと見つめていた俺にいきなり飛びついてきた挙句騒いでいるこの男は綾瀬湊(あやせ みなと)。 俗にいう幼馴染の様な存在で、俺を怖がらずに喋りかけてくる唯一の友人だ。 「そーゆーお前はどうだったんだ?相変わらず底辺さまよってんのかよ」 「ちょっ、バカ!事実だけども声がデカイ!!」 しぃーっ、と人差し指を口に当て不安そうに辺りを見回す湊。 俺からしてみれば特に周囲を気にするような話ではないと思うが....こいつにとっては一大事。

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