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【香】第29話

大きな手のひらは幼き体を熱く求めた。手以外には何も見えないが恐怖はない。 恥ずかしさがどうにも耐え難く、小さな体を縮ませると、さわさわと優しく執拗に撫でられて、次第に力が抜ける。 もっと触って欲しい。 でもそんな事を思っていると知られたくなくて、唇を噛み締めて声を殺すが、体は浅ましいほどに反応を見せていた。 ―――足りない。 こちらは体の奥が疼いて仕方ないでいるのに、大きな手はいつまでも望む場所を触れてはくれない。 堪えきれず身を引くと、強い力で脚を掴まれて、強引に割り開かれた。 さっきまでの焦らすような動きから一転する。 いきなり、しどしどと濡れるその孔へ指を突き入れられ、燃えるように熱い中をぐるりと回された。 「は、ぁっ―――!?」 ビクビク―――と、震えながら柳小路成(やなぎこうじなる)が目を開けると、そこには見慣れた天井があった。 自分の部屋の天井だ。 しばらく現実に戻って来れずに、ベッドの上で放心する。 「ゆめ、」 とんでもない夢を見た。 成だって中学三年の男子なのだから、エッチな夢を見ない訳ではない。 ただ、今まではもちろん相手は女子で、成が抱く側だった。因みに、実際に女子を抱いた事はないので、想像による産物だ。 さっきの夢では、成が愛撫を受ける側で、相手は柔らかい胸もない男性だった。それは熱く生々しく、明らかに経験に基づくもの。 実際に経験した事は、一度だけしかない。 ―――里弓兄。 夢の男性が従兄の河埜里弓(かわのりく)だったかは分からないが、記憶にある情交と混じり、どうしてもあの日の事に繋がる。思い出さないようにと記憶の箱に鍵をかけて、忘れたフリをしていたけれど、あっさりと蓋は開いてしまった。 再燃しそうになる熱を逃がそうとするが、体は未だ夢の余韻に鈍く痺れている。 ―――出てる、よね? 恐る恐るスエットのズボンに手を入れると、中はじっくりと濡れていた。 「うわ、ひどっ。」 大量の白濁でパンツどころかスエットまで濡れている。なのに、成の小さな欲望は熱を保ったままで、今にも弾けそうな状態だ。 念のために、後ろの孔を指で撫でるが、そこは固く閉じていた。発情期が来た訳ではないらしい。 ―――良かった。けど、 実はずっと、その閉じた孔の中が気になっている。発情期でなくても、もしかしたら気持ち良くなるのではないだろうか。 体験した里弓との行為はあまりに強烈で、ありありと思い出してしまった今、入れてみたくて、中を触ってみたくて仕方なかった。 しちゃダメだ―――と、頭で分かっているのに、体の欲は高まっていく。 じわじわと籠る熱に身を焼かれ、成はひとり怯えた。

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