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【車】第34話

昼休みが終わる五分前の職員室は慌ただしくも、いつもより雰囲気が緩い。 教師たちが授業の準備をしているのを横目で見ながら、成は呼び出した担任の元へ近寄った。 「先生。」 後ろから声を掛けると、古山がビクッと驚いて振り返る。 「おう、柳小路。」 「テスト結果もらいに来ました。」 「ちょっと待てよ。―――あったあった。」 古山が机の棚を漁ると、A4サイズの封筒を取り出し成へ差し出した。分厚い。 入っているのは全教科分の問題と答案用紙だから、まあまあなボリュームがある。 「まぁ、あれだ。あんまり落ち込むなよ。」 「そんなに酷い点数なんですか?」 受け取った答案用紙を取り出して、ザッと確認すると、確かに今まで見たことがない点数が並んでいた。 ―――ヤバイ。 さすがに危機を感じて、成の頬がひきつる。 「いつもよりは下がってるが、平均はクリアしてるし。まぁ、よくやった方だと思うぞ。次の全国テストで存分にがんばれ~。」 古山の適当で投げやりな慰めに、成は深刻な顔で頷いた。 定期テストは受験に関係ないとはいえ、推薦を受けたい成としては多少内申に関わってくる。次回の全国テストは、しっかりと体調を整えて望まねばならない。 「それにしても、昨日のプリン―――河埜里弓さんには感動したな~。」 グッと気合いを入れた所に、古山のこの言葉。もう脱力してしまう。 「先生、もうプリンスでいいです。」 「あはは、悪い悪い。ほら、見るか?プリンス。顔は小せえし、足は長えし、もう人種が違うな。」 古山がニマニマしながら、パソコンのデスクトップを見せてくる。 先日、夜に撮った里弓と古山のツーショット写真だった。そんなもの見せられても対応に困る。心底、どうでもいい。 「で、昨日の礼って訳ではないが、特別に教えてやろうと思って。柳小路、気にしてたろ?」 「何をです?」 コイコイと手招きするので、古山の顔の位置に身を屈めた。 ちょうど内緒話をするような体勢になる。 「草野なんだが、」 「え、草野さん?」 古山から耳打ちされ、成は目を見開いた。

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