42 / 101
【角】第42話
―――項だけは、噛むな。
それだけを唱えながら、河埜里弓(かわのりく)は飛びそうな意識を何とか繋いでいた。
「ぁあっ、あっ、」
獣と化した里弓の下では、柳小路成(やなぎこうじなる)が幼い体を震わせて啼いている。
何度目の絶頂だろうか。
数えてはいないが、恐らく両手では足りない筈だ。成の体力はとうとう限界のようで、ソファに倒れたままぐったりと動かないでいる。
「成、起きてるか?」
意識を失っているのではないかと思い、微動だにしない成に声を掛けつつ、里弓は体を引いた。
ズルズルと雄を抜くと、孔の壁が引き留めるように締め付けてくる。また突き入れたくなるのを耐え、一気に成の中から出た。
「ぁぅっ、」
成が掠れた声を上げる。
見れば、ビクビクと体を震わせて、孔からは白濁を溢していた。幼い従弟を汚した背徳感にぞくりとなる。
通常であれば自己嫌悪に襲われている事だろうが、まだフェロモンにあてられている最中だ。吐き出しても、吐き出しても、欲望が止めどなく湧いてくる。
里弓は再び手を伸ばし、白濁を流す孔へ指を突き入れた。
「はぁ、んっ、りく、」
「出さねぇと。」
言い訳のように呟くと、柔らかな成の中を指で探る。ぐるりと壁を擦ると、途端に甘い声が上がった。
「ぁあ、はぁっ、あっ―――、奥に、」
「奥?」
里弓が指で広げるように開けると、成の真っ赤な中が見えた。
「美味そう。」
「もう、見てないで。早く、りくにぃっ。」
成は横を向いた体勢で、里弓の指を飲み込んだまま、ゆらゆらと腰を揺らす。体を持ち上げる力もないのに、まだ男を誘おうとしている。
「止めた方がいいと思うが。」
「やだ。まだ、まだして。気持ちよくして。僕の中にいっぱい入れて。」
成がドロドロに溶けた顔で、里弓の思考を破壊してくる。
いったい、どこで覚えてきたのか。これがオメガの本能なのか。
「誰にもしないで、僕に、僕だけにして。僕だけ犯して。」
耳から言葉から視覚から匂いから、全てに誘われる。端から理性はないのだし、何より成からの誘惑に逆らえる筈もないのだ。
こんなのは、圧倒的に里弓の敗けだ。
ともだちにシェアしよう!