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【角】第43話

翌朝、喉が痛くて目が覚めた。 部屋に射し込む光の様子から、今が既に朝だと分かる。 ―――何時だろう。 時刻を確認しようとしたが、それは叶わなかった。 全く身動きできないのだ。 腕は鉛が詰まっているかのように重く、下半身は力を入れようとしても無様に震えるだけ。 「うぅっ。」 寝返りすらも出来ない状況に、成は枕に顔を埋めたまま唸った。 「もう朝か。」 すぐ隣から他人の声が聞こえて、成は慌てて首を捻った。眠気が吹き飛ぶ。 「ちっ、九時過ぎてんじゃねぇか。間に合わねぇな。」 里弓が忌々しげに時計を見ながら、ベッドから身を起こした。拍子に布団が捲れ、里弓の肌が顕になる。内心でギョッとした。 そして、見慣れていた里弓の裸に動揺している自分が嫌になる。そんな成も、当然ながら衣服は着ていない。 「成、中学に欠席の連絡するぞ。スマホ、どこだ?」 「か、カばン。」 「ひでぇ声だな。」 ガラガラの声を里弓から揶揄され、頬が勝手に熱を上げる。喉を枯らすほど喘いだ昨夜の情事が生々しく甦った。 どんな顔をすればいいのか。 ―――記憶喪失になりたい。いや、里弓兄の記憶を抹消したい。 頭を殴ったら忘れてくれるかもしれない―――と、物騒な事を考える。 痛む体に鞭をうち周りを見渡すが、殴れそうなものは近くになかった。 残念だ。 里弓はというと、大して気にした様子もなく、マイペースに成のカバンを漁り始めていた。 ひとり慌てている成がおかしい様に思えてくる。 「あった、あった。あの変な担任の名前、古山だったか。」 「う、うん。」 「俺がかけるぞ?」 問いに対する返事は聞かず、成のスマホを里弓が弄る。何も後ろめたい事はないが、勝手に見るのはどうなのだろうと思う。 プライバシーを訴えても負ける気しかしなかったので、成は潔く口を閉じた。 「私、柳小路成の家の者ですが―――。」 保護者代理として中学へ電話をかける里弓の背中を、成は目を細めて眺めた。

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