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【龍】第76話

細く白い首筋が河埜里弓の目の前にある。 皮膚の下の骨と筋肉と血管を想像し、喉が渇くような衝動に駆られた。 ―――いや、 水分を欲している訳ではない。ましてや、吸血鬼のように血液を飲みたいと思ってもいない。 白く艶かしい首筋に歯を立てたら、どんなに気持ちがいいだろうか―――と、そう欲してしまう。 アルファの本能。 厄介な衝動だ。 普段は背後からなど抱きはしないのだが、今夜は止める気にならない。 「ぁっ―――」 試しに首筋の皮膚に軽く歯を立ててみると、柳小路成が小さく恐がるような声を上げた。 しかし、逃げようとはしない。 どこも押さえ付けていはしないのだから、里弓の手から逃げるのは容易だろうに。 「ぁ、り、く―――怒って、る?」 「いや、別に。」 成に問われて否定はしたが、実際のところ、里弓はかなり怒っていた。 勝手に見合いをした事も、のこのこ見合い相手と旅行に来た事も、危うく無理やり抱かれる所だった事にも、里弓に何ひとつ頼らなかった事にも―――。 完全に八つ当たりだ。 成を責めるべきでないと分かっているが、気持ちの治まりがつかない。目の前の首を噛めば、いくらかスッキリする気がする。 「―――で、」 成が何かを言ったが、甘い首筋に熱中するあまり聞き逃した。揺さぶっていた体を一旦止める。 「何?」 「項―――、噛んで。」 頭が真っ白になった。 固まる里弓を振り返り成が更に言う。 「僕の項。」 「―――バ、カ言うな。」 一気に正気へ返った。 今のタイミングで噛めと言われなければ、噛んでしまっていたかもしれない。危なかった。 「僕じゃ、だめ?」 成が泣きそうに顔を歪める。 里弓は仕方なく、成の孔から己の雄を引き抜いた。体勢を変えて正面から向き合う。ヒートはまだ治まっておらず、かなり滑稽な姿だ。 とりあえず、互いの下半身をシーツで隠す。 「そういうんじゃねぇよ。正気に返ったら、後悔するだろ。成。」 「しっ、ない、もん。」 ぷぅと、成が頬を膨らます。里弓は笑いながら、成の体を押して倒し、覆い被さった。 可愛い可愛い従兄。 そして、何より大切な―――。 「俺はする。判断力のないおまえを騙し討ちするようは真似はできねぇよ。」 「それって、どういう―――。」 不思議そうに成が見上げてくる。そんな成に構わず細い脚を開き、間に体を入れた。これ以上は何を話してしまうか分からない。 「話がまだっ―――、ん、ぁあっ!」 ぐちゅっ―――と、濡れた柔らかな孔に突き入れると、途端に成が甘く溶ける。 里弓は唇を寄せ、その啼き声ごと奪い取った。

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