77 / 101

【龍】第77話

記憶はハッキリしていないが、今回のヒートは、普段より時間が短かった気がする。 もしかすると、薬で無理やり起こしたヒートだからかもしれない。 二度ほど欲望を注がれ、気を失うように眠りにつき―――、起きたのはもう昼に近い時間だった。 追い立てられるように飛行機へ乗せられ、座席に座ると必然的に目蓋は引っ付き、柳小路成(やなぎこうじなる)が再び目を開けた時には空港に降り立っていた。 「えっと、」 帰ってきたはいいが、何処へ行くべきか困ってしまう。隣の河埜里弓(かわのりく)は無言だ。 この態度を見る限り、柳小路の家には帰してもらえない気がする。河埜家に連れ帰るつもりかもしれないが、それは無理だ。成はもうあそこへ戻る訳にはいかない。 「親父がな。」 「あ―――、伯父さん。」 ヒート騒動のせいで、伯父の事がすっかり頭から飛んでいた。 「不戦敗だったよね?伯父さんに何かあったの?」 「倒れた。」 「―――た、」 ヒュッと喉が詰まる。 連鎖的に、伯母の顔が頭を過った。しかし、青ざめた成を見て、心配いらないというように里弓が首を振る。 「そう大した事はないらしい。入院はしてるが、念のためだ。」 「それじゃあ―――、伯父さん、福岡の病院にいるの?入院はいつまで?」 「二、三日。だから、早くて明日か。」 明日か明後日には退院できる。 里弓の言う事を疑ってた訳ではないが、本当に伯父は重い病気などではないらしい。ホッとする。 「伯父さん、迎えに行く?」 「いや、行かねぇ。手は足りてるからいらねぇって。」 確かに、福岡は伯父の故郷だから、親戚は多い。何度か親戚一同と会った事はあるから、仲の良さも知っている。 それでも、迎えに行きたい気持ちが強い。さすがの母も、倒れた伯父を迎えに行く事くらいは許してくれる―――かもしれない。 むむむ―――と、成が唸っていると、米神を突かれた。 「俺たちは、話つけに行くぞ。」 「へ?」 里弓の言葉に、成は米神を押さえながら、キョトンと首を傾げた。

ともだちにシェアしよう!