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【詰】第94話

いいのだろうか。 この手を取っても。 許されるのだろうか。 この人のモノになっても。 きっと、成は幸せになるだろう。 ―――だけど、里弓は? 里弓ならば、どんなオメガとだって番になれるのに、成の人生を背負わせていいのだろうか。 断る選択肢はない癖に、グルグルと考えてしまう。 ―――それに、まだ伝えていない。 まだ自分の気持ちをきちんと告げていない。里弓が察しているにしても、曖昧なまま受け入れてしまうのは、卑怯だと思う。 成は首に掛けられたネックレスにすがるよう右手で握りしめた。 「里弓兄。」 覚悟を決めて呼び掛けると、隣の里弓が静かに居ずまいを正した。 「ひとつだけ、言っておきたい事がある。僕にとっては、大事なコトだから知っておいて欲しい。もしかしたら、知られちゃってるかもしれないんだけど、僕から―――、僕の口できちんと伝えたい。」 ああ―――と、里弓が柔らかく相づちを打つ。 優しい瞳に見守られ、するりと成の口から言葉が零れていた。 「僕は、里弓兄が好き。」 成の告白に、里弓が僅かに目を見張る。 「里弓兄が好きだから、番だけじゃなく、恋人になりたい。浮気はしないってさっき言ってくれたけど、誰かが里弓兄の近くにいるってだけで、たぶん嫉妬する。束縛とか、他にも、―――色々と面倒な事を言うと思うんだ。」 今さらだけど、成にとっては初恋だ。 里弓の番になった想像をしてみても、自分がいったいどういう気持ちになるのか、全く分からない。里弓の行動のひとつひとつに噛みついたりするかもしれない自分が浮かび上がり、ゾッとした。 話しの途中で耐えきれずうつ向いてしまった成の頭を、里弓の手が撫でる。 「バカだな。何を心配してるかと思ったら。そんなの、俺だってそうだろ。」 いや、俺の方が酷い―――と、里弓が笑う。 「宣言しておくが、これからは一切、我慢する気ない。成は俺のモノだから。俺以外―――、親父であろうと指一本触らせるな。」 「え、伯父さん?え?」 予想外の話の展開についていけず、成の思考は鈍くなる。五十メートルを全力疾走していたのに、目の前に突然跳び箱が置かれた気分だ。 ―――触らせない? スキンシップが大好きな伯父に指一本触らせないなど、無理ではないだろうか。 いやいや、違う。考えるべき所はそこでない。 伯父にすら嫉妬するのだと、里弓は言ったのだ。本当だろうか。 その事が、もし本当であるのならば―――。 「僕を好きなの?」

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