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【桂】第15話

信じられない。 信じたくない。 すっかり目が覚めていたが、現実から逃げたくて成は布団に潜り続けていた。 ―――里弓兄と、里弓兄と、せ、せ、せ、 いったいどうなっているのか。 何かの病気で倒れたと思ったのに、気が付けば里弓の立派なあれを飲み込み腰を振っていたのだ。我に返ったあそこで止めるべきだったのに、全く制御できず自ら誘い込み、呆れるほどの体力で快楽を追い続けたのだ。 腰や股関節は経験した事がないほど痛むし、未だにあそこは開いている気がする。自分のお尻が怖くて確認できない。 「ぅぅぅっ。」 昨夜の狂ったような時間を反芻しては、ひとり呻くしかできないでいる。 「おい、成。起きてんだろ。」 布団の上から誰か―――里弓しかいないのだが―――に頭の辺りを叩かれ、ビクッと成は硬直した。居なくなっていた筈なのに、いつの間にか戻ってきている。 「さっさと起きろ。」 「ぎゃ!」 固まっている内に里弓から布団を剥ぎ取られ、急に 視界が明るくなる。成が瞬きすると、里弓が目の前に手を差し出してきた。 手のひらには、クリーム色の小さな粒が乗っている。何かの薬のようだ。 ―――鎮痛剤?わざわざ? 「一応、飲んでおけ。」 「あ、うん。ありがとう。」 里弓の妙な優しさにビクビクしながら、成は差し出された錠剤を受け取った。 しかし、薬を飲む為の水が見当たらない。階下へ取りに行こうかとも思ったが、平常通りに歩ける気がせず、成は錠剤のみを口の中へ放り込んだ。 「これで、妊娠はしないと思うが。」 「ぶっ!?」 唾液で錠剤を飲み込むと同時に、里弓がとんでもない事を口にしたため、成は激しくむせた。変な所に唾液が入って鼻の奥が痛い。 「げほっ、げほっ、」 「おい、こら吐き出すな。ちゃんと飲め。」 薬を吐き出させまいと、成の口を里弓が手のひらで塞ぐ。鼻からも口からも、息ができない。 窒息の危機に、成は口を覆う里弓の手を慌てて引き剥がした。 「ちゃんと飲んだ!というか、何の薬!?それに、妊娠って―――」 成が混乱しながら叫ぶと、里弓が目を見張る。 「成。おまえ、気付いてないのか?」 里弓のからかうでもない真面目な問い掛けに、スッと頭の熱が下がった。 ―――薬。妊娠。 二つのキーワードが頭を廻り、途端に逃げ出したくなる。今から告げられるであろう内容の深刻さに、足元から悪寒が走った。 青ざめていく成を見て、里弓が同情したような顔をしつつも、迷う事なく口を開く。 「避妊の薬だ。おまえ、発情したんだよ。」 分かりやすい里弓の言葉を処理できずに、成はポカンと口を開いた間抜け顔で呆然となった。

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