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◇ 「うわ~、広いな。よくこんなデカイの建てたもんだよ。何年ローン?」 「10年かな」 「え!?みじか!そんなんで、家建てれるのか…」 「まあ、俺達結婚式も挙げてないし、お互い貯金だけはすごいしてたから頭金にかなり入れたんだ。でも10年も掛けるつもりないけどね」 「…姉ちゃんもお前もいいとこ勤めてるもんな。俺とは大違いだ」 「何言ってるんだ。カナだって仕事、頑張ってるじゃないか」 「そりゃそうだけど…俺とお前らじゃ稼ぎが違いすぎるってーの!」 買ったばかりだろう触り心地抜群のソファーの背もたれにヤケになったように腕を伸ばす。そんな俺に苦笑を浮かべながら凌が近寄って来て「ん」と白ワインの入ったグラスを手渡してきた。 「お、ありがと。…てかさ、折角結婚したのに、式も新婚旅行も行かないなんて、姉ちゃんらしいっちゃらしいけど、凌はそれでいいのか?しかも今日は姉ちゃんだけ友達と旅行行ってるって言うし…」 姉ちゃんに無理矢理捩じ伏せられたんじゃない?なんて不安と心配を口にすれば、アハハと笑いながら凌が俺の横に腰を下ろす。 「俺も菜緒さんと同じ考えだよ。結婚してもお互い今まで通り友達とは過ごそうって決めてるんだ。それに今後に金がいるんだし、余計なことに使えないよ」 「あ…そうだよな。…子供とか、出来たら、いるもんな」 未だ俺の好きな人の口から姉の名前が飛び出す事に慣れない。結婚したんだから、さん付けやめたらいいのに、と思うけどそれを言うと凌の口から「菜緒」と出るのかと思うと…言えない俺は意気地なしだ。 それに割り切ったつもりだったのに、子供なんて。子作りをする2人を想像してしまいグイッと手元にあったワインを飲み干す。 「カナ?お前弱いんだから、そんな飲むと…」 「っ、…姉ちゃんだって今頃友達といいもん食ってたらふく飲んでんだ。俺達も飲もうぜ!」 「…じゃあカナが持ってきてくれたワイン全部開けちゃう?」 「いいねー!あ、もちろん新築で吐くなんてことはしないから大丈夫!」 「別にいいよ。あ、でも吐くならトイレでよろしく」 そう行って笑う凌。ああ、ほんとイケメン。初恋が一目惚れっていうほど凌は俺の好みドストライクの顔だった。人生で惚れたのは凌しか居ないから、果たして自分がゲイなのかどうかは分からないけれど、好き過ぎて目の前の凌の顔がぐらりと揺らぐ。 俺の好きという気持ちが溢れないか心配するほどのグラつきだ。 あれ、 なんか凌以外の部分も渦を巻いている気がする。 これ、そんな強いお酒だったかな。 ダメだ、意識が遠のく。せっかく凌と2人で過ごす時間だったのに、勿体無い。今日を境に当分は凌には会わないようにしようと決めていたのに。 ――凌を好きでいるのは今日で終わりにしようと思っていたのに。 ああ、勿体無い。 勿体無いな… 「…カナ、可愛い俺の奏多。やっとこの日が来たよ。もう我慢しなくていいんだよね…?」

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