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番外編 / 出会い02

目の前のヴァンパイアの一言に固まってしまった俺だったが、「あ、ごめん。引いた?」と困ったように笑う彼にブンブンと首を横に振る。 「や!引いてないっす!引いてないけど…ごめん、俺お菓子は何も持ってないんだ」 トリックオアトリート。なるほどね。 そういえばもうすぐハロウィンだ。来る途中にも獰猛で毛むくじゃらな狼男に包帯ぐるぐる巻きのミイラ男を見た。レースがヒラヒラ視界で踊るメイドや、童話の国のアリスに箒を持った魔女。 クオリティの高いものから、ただ単に獣耳を付けただけのものまで多種多様。どうりで今日は学校内に制服を着た人類が少ないと思ったよ。ハロウィン=仮装の思想が根付いているのがよく分かる。 皆浮かれてるんだ。 なにせ今日は年に1度のお祭りなのだから。 10月の後半に行われる高校の学園祭。近隣の住民や他校生など外部の人間が入れる大きなイベントらしく、今年入学したばかりの俺は規模の大きさに驚いてばかりだった。 そんな中クラスの出し物であるお化け屋敷のオバケを渾身の力でやり切り、休憩時間に学校内をウロついていた。1人で。とは言っても友達が居ないわけじゃない。 普通に気の合う友達は居る。ただ、休憩時間が被らなかった、それだけ。さすがに他クラスにまで勢力を伸ばしていなかった俺は仕方なく1人で回っていたのだ。 そして、彼に出くわしたんだ。 ゲーム風に言うならば突然ラスボス級のヴァンパイアにエンカウトした感じ。 「やっぱり持ってないよな。…ナナ、もう少ししたらおばさんがお菓子持って来てくれるから、もう少し待てない?」 「ヤダァ!待てない!お菓子食べたい!ナナもう待てないもんっ」 彼は高い身長を屈ませて俺に背を向けた。マントの所為で分からなかったが、彼の背後には赤い頭巾と赤いワンピースを着た小さな女の子が居た。 その子にあやす様に話し掛けている。赤ずきんちゃんの仮装だろうか。とても可愛らしい。 だけど、泣いた後なのか目の周りは真っ赤だった。 「…その子どうしたんだ?」 「え?…あー…この子俺の従姉妹なんだけどお気に入りのお菓子、母親が車に忘れてきたんだ。今、待ってるところなんだけど第2駐車場にしか車停められなかったらしくて時間かかってるんだよね」 「第2まで?」 第2と言えばまあまあ遠い所だ。規模が大きいだけあって駐車場も学校の運動場だけでは間に合わないらしい。

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